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歯が抜けて あなた頼むも あもあみだ

 「痩蛙(やせがえる) 負けるな一茶 是(ここ)に有(あり)」。江戸時代後期に活躍した俳人、小林一茶の有名な句。やさしさとユーモアに満ちた句を生涯2万句も詠んだ一茶は、50歳を前にすべての歯を失ってしまったと言われています。「歯ぎしみの 拍子ともなり きりぎりす」。これは、歯がまだ顕在だった頃の句に違いありません。そして月日が過ぎ、最後の一本の歯が抜けてしまうと、「歯が抜けて あなた頼むも あもなみだ」という句に自らの気持ちを託しました。歯をすべて失ってようやく、噛むことの大切さを悟ったのか、あとは阿弥陀仏の慈悲にすがるしかないと、一茶も心細くなったのでしょうか。

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