口腔内の常在菌は400種類以上、100億個以上いるとも言われる。その多くは、善玉菌の「口腔レンサ球菌」だ。歯の表面を覆い尽くし、ほかの病原菌が歯につくのを阻止する。知られていないが、縁の下で歯を守る、ありがたい細菌だ。
一方、少数派だが、環境の変化で急増し、病気を引き起こす2種の常在菌がいる。一つは虫歯の原因菌の「ミュータンス菌」だ。この細菌は歯間などにたまる歯垢内に済み、食物に含まれる砂糖成分を好んで食べて乳酸を生む。この酸が歯を侵して虫歯を作る。
この菌は粘着質の「バイオフィルム」という膜も作る。菌と乳酸が、この膜に守られると、唾液で洗い流されなくなるので、虫歯ができやすい。膜の原料も砂糖なので、取り過ぎないようにしましょう。
もう一つの厄介者は、歯周病を起こす「歯周病菌」だ。この菌は、歯と歯肉の間(歯肉溝)にたまる歯垢内にいて、毒素を作り、歯肉に炎症を起こさせる。症状が進行して歯を支える骨を溶かすと、歯が抜けやすくなる。これらの細菌は、食事をすると食物や唾液と一緒に胃に流れていくので減る。
しかし、寝ている間は唾液の出が悪いので菌はどんどん増えていく。起床時の細菌数は、前日の夕食後の10倍以上にもなるという。
読売新聞 2010.3.18