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口腔ケアがつないだ家族の絆

「主人の口臭が気になって、孫を連れて来れないのよね」
 廊下で立ち話をしていたときのこと。三郎(仮名)さんの奥さんが、ポツリと
つぶやきました。口腔ケアを担当していたIさんは、奥さまの言葉にハッとした
そうです。

「口腔の乾燥が口臭の原因になる」と、以前参加したセミナーで習ったのを思い
出したIさん。唾液の分泌を促すために、ストレッチを加えた口腔ケアを心がけ
ました。また、それまで朝晩に行なっていた口腔ケアを、この患者さんの場合は
なるべく面会時間前に行なうようにしたといいます。

 次のカンファレンスで、Iさんは自分が実践し始めたことを看護師長に報告。
そして、口腔乾燥がある患者さんへの唾液分泌を促すケアと、口臭が気になる患
者さんへのお見舞い時間に合わせた口腔ケアの実施を提案したのです。

「ご家族にもっとお見舞いに来てもらい、患者さんと過ごす時間を増やして欲し
い」。その考えに共感する多くのスタッフが賛同し、Iさんの提案する口腔ケア
が実施されることになりました。

 それから数週間が経った頃のこと。Iさんは、病室でお孫さんと三郎さんが楽
しそうに話しているのを見かけたそうです。

「病室から笑い声が聞こえてきたんですよ。それまで、誤嚥性肺炎予防などのた
めに口腔ケアを行なっていました。でも、口腔ケアは患者さんとご家族の絆を深
める上でも役立つものなのだと、あらためて気づかされました」
 Iさんは、穏やかな笑みを浮かべてそう話してくれました。

入院患者の口腔チェック 治療の仕組み考え 病院で調査 岩手・宮古歯科医師会

宮古市の県立宮古病院(菅野千治院長)に入院する患者の口腔(こうくう)状態をチェックし、速やかな治療の仕組みを考えるための検診調査を、宮古歯科医師会(倉田英生会長)が始めた。

 歯科のない同病院と歯科医との連携を目指す宮古保健所の委託事業。16日は同歯科医師会の及川穣医師ら2人が手分けして病室を回り、「歯の具合はどうですか」などと声を掛けて検診した。

 患者側からは「痛くて入れ歯を外しているが、どうしたらいいか」といった相談も。及川医師は「思ったより口の中がきれいだ。病院スタッフのケアがしっかりしている。しかし、状態の悪い患者については病院と歯科医がばらばらではいけない」と話し、連携の必要性を指摘した。2010年6月17日 提供:毎日新聞社

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