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声かけはコミュニケーションの第一歩

「いやだ! 助けて!」

 Nさんが口腔ケアをしようとすると、いつも暴れ出すキミ(仮名)さん。半年
前、Nさんが初めて担当した利用者さんで、重度の認知症の方です。キミさんは、
口腔ケアをしようとするといつも、叩いたり蹴ったりしてNさんを拒絶していま
した。

 どうしたらいいか分からず、Nさんは毎回オロオロするばかり。訪問するたび
に「わたしは嫌われてるから、キミさんは一生口を開けてくれない」と落ち込み、
泣きながら帰ることもあったそうです。

 そんなある日、Nさんにアドバイスをくれたのはグループホームの施設長でし
た。
「前の歯科衛生士さんは、もっと落ち着いたトーンでキミさんに話しかけていた
わよ。お話ししながらマッサージなんかして『キミさん、今日お口のケアする?』
って聞いてからケアを始めていたわね」

 Nさんは自身の行動を思い出してハッとしました。キミさんに聞こえるように
と大きな声で話しかけていたり、認知症の方との接し方が分からず、訪問すると
すぐ口腔ケアを始めようとしていたのです。
 反省したNさんは、声かけから見直すことにしました。先輩や、訪問先の看護
師さんの声かけを参考にし、声の大きさ、高さ、話すスピード、タイミングなど
に気をつけていきました。

 すると、3ヶ月ほどが過ぎた頃から、キミさんは暴れて口腔ケアを拒否するこ
とがなくなっていったのです。相変わらず口は悪いけれど、最近では自分からイ
スに座り口を開けてくれるように。

「声かけって、訪問を始める前はそんなに意識してなかったんですけど、コミュ
ニケーションをとる上で本当に大切だな、って実感しています」とNさんは言い
ます。
 
 やさしく静かな声で語りかけるNさんに、文句を言いつつも口を開けてくれる
キミさん。半年前の二人を想像できない、穏やかな光景でした。

第7回症例検討会

 12月11日道北口腔保健センターにて摂食・嚥下リハビリテーション症例検討会が開催されました。当日は、小樽歯科医師会の館先生、キユーピー(ユは小さい文字ではないそうです。)からの基調講演ならびに、旭川日赤、札幌歯科医師会、当センターからの症例と4時間近くにわたり発表されました。参加者は、歯科関係のみならず医療機関、施設、ケアマネさん、栄養士さんなど多職種にわたり50名ほどでした。当院からもお声を掛け施設職員さん、栄養士さん、ケアマネさんの参加ありがとうございました。今後も開催するときは宜しくお願いします。

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