深谷市の歯科診療所で02年、虫歯の治療中に同市の木部遥加ちゃん(当時4歳)が死亡したのは、麻酔注射で急性アレルギー反応を起こしたのに適切な処置を怠ったためとして、両親が男性歯科医(60)に7837万円の賠償を求めた訴訟で、さいたま地裁(佐藤公美裁判長)は16日、歯科医の過失を一部認め、440万円の支払いを命じた。
佐藤裁判長は判決で、遥加ちゃんが急性アレルギー反応を起こしたのに歯科医が約20分間気付かず治療を続けたことについて「観察義務を怠った」と指摘し、歯科医の過失を一部認めた。また、遥加ちゃんの死亡と歯科医の過失との直接の因果関係は否定したが、「被告がバイタルサイン(意識・呼吸・脈)の観察義務を尽くしていれば、遥加ちゃんが生きていた相当程度の可能性があった」と結論付けた。
判決によると、遥加ちゃんは02年6月15日、治療中に歯茎に局所麻酔薬を注射され、急性アレルギー反応でアナフィラキシーショックを発症し、呼吸停止状態に陥り死亡した。
歯科医側は裁判で、「当時の医療水準では発症率の低いアナフィラキシーショックを予見することはできなかった」と主張していた。歯科医側の弁護士は、「これをもって過失となれば、歯科治療をちゅうちょする医師が現れるのではと心配している」とのコメントを出した。
判決後、弁護士とともに取材に応じた遥加ちゃんの父寿雄さん(44)は、「納得とまではいかないが、遥加に報告したい」と複雑な表情をみせ、「遥加は生きていれば中学1年になる。判決をきっかけに、再び同じような悲しみが生まれないようにしてほしい」と話した。
遥加ちゃんの死亡を巡っては、県警が05年1月、歯科医を業務上過失致死容疑でさいたま地検に書類送検したが、地検は同7月、不起訴処分(容疑不十分)とした。両親はさいたま検察審査会に審査を申し立て、同審査会は06年10月、不起訴不当の議決をしたが、地検は07年3月、再び不起訴処分(容疑不十分)とした。
2010年12月17日 提供:毎日新聞社