厚生労働省は、「介護職員によるたんの吸引等の試行事業」の実施状況に関する中間報告を、2月21日に開かれた「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」(座長=大島伸一・独立行政法人国立長寿医療研究センター総長)の会合で公表した。試行事業のうち、不特定多数の利用者に医行為を実施することを前提とした研修では、気管カニューレ内のたんの吸引と経鼻経管栄養の実習が、他の医行為に比べて大幅に遅れている。
今回の試行事業では、実地研修として「たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内)」と、「経管栄養(胃ろうまたは腸ろう、経鼻)」を行うことになっている。不特定多数の利用者に医行為を実施することを前提とした研修の場合、一定の条件下で利用者に対する実地研修を20回以上(口腔内のたんの吸引だけは10回以上)行う必要がある。実地研修は今年1月から2月末をめどに行われている。
厚労省によると、不特定多数の利用者を対象とした実地研修で、「まだ一度も実習を行っていない人」の割合(2月14日段階)は、「鼻腔内のたんの吸引」(参加者は137人)で24.1%、「口腔内のたんの吸引」(同137人)で12.4%、「胃ろう・腸ろうによる経管栄養」(同137人)で10.2%だった。一方、「気管カニューレ内のたんの吸引」(同114人)は59.6%、経鼻経管栄養(同135人)は42.2%だった。一部の実習の進ちょくが遅れている点について同省では、介護施設や在宅介護の現場で、「気管カニューレ内のたん吸引」などを必要とする利用者が少ないことが背景にあるのではないかとしている。
この報告を受け、桝田和平構成員(全国老人福祉施設協議会介護保険委員会委員長)は、「気管カニューレ内のたんの吸引については、不特定多数に医行為を実施する試行事業から外すべきではないか」と提言。一方、平林勝政構成員(國學院大法科大学院長)は「(気管カニューレ内のたんの吸引は)基本的に外すべきではない」とし、実習の場所を工夫し、協力を得られる利用者の確保に努めるべきと訴えた。また、内田千恵子構成員(日本介護福祉士会副会長)は、「十分に実習できないまま見切り発車するのは認められない」とし、実習の機会が十分に確保できる医行為から、段階を踏んで制度化すべきと述べた。
( 2011年02月21日 22:55 キャリアブレイン )