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9割が「決断難しい」 栄養補給、中止経験も4割 認知症の末期患者で医師

認知症の末期で食事を取れなくなったお年寄りに対し、胃に穴を開ける「胃ろう」や点滴で水分と栄養を補給することについて、医師の約9割が取り組むかどうかの決断に難しさを感じ、始めた後も4割以上が途中でやめた経験があることが27日、日本老年医学会の調査で分かった。

 調査を担当した東大大学院の会田薫子(あいた・かおるこ)特任研究員(死生学)は「栄養補給の手段がありながら実施しないことに抵抗を覚えるのは自然な感情。補給するとかえって患者の苦痛が増したり、家族から『自然にみとりたい』と懇願されたりすることもある。どちらを選ぶか医師は悩んでいる」と分析している。

 今回の調査対象は、認知症末期患者への胃ろうや点滴による水分と栄養の補給。「方針を決める際にどの程度の困難を感じたか」の問いに「非常に感じた」が16%、「ある程度感じた」が46%、「少し困った」は27%で、約9割が何らかの抵抗を感じていた。「感じなかった」は6%。

 補給を始めた後、中止した経験は「なし」が53%、「あり」は44%。

 補給するかどうかの決定が困難な理由(複数回答)は「本人の意思が不明」(73%)が最も多く、「口から食べさせることによる肺炎や窒息の危険」(61%)、「家族の意思が統一されていない」(56%)の順。「補給を控えることの倫理的問題」(51%)、「補給に踏み切る判断基準」(45%)、「補給することに関する倫理的問題」(33%)のほか、「刑事面での問題」(23%)、「民事訴訟の懸念」(14%)と法的な問題を挙げた人もいた。

 中止を決めた理由(複数回答)は「下痢や肺炎を起こすなど医学的理由」(68%)に続き、「家族が中止を強く望んだ」(43%)、「継続は患者の苦痛を長引かせると判断した」(23%)など。

 昨年10~11月、学会の会員医師4506人に調査用紙を郵送し、1554人から有効回答を得た。医師の勤務先は病院や療養型医療施設、老人保健施設など。

がん治療で口腔ケアを 副作用で炎症 食事も困難に

がん治療によって起こる口腔粘膜炎などの口の中の合併症は、患者の生活の質(QOL)を大きく損なう。その症状を軽減するため、口腔ケアが注目されている。道内でも、がんの治療気管と歯科医とが連携する動きが出始めている。抗がん剤や放射線治療では、副作用として重い口腔粘膜炎の発症や唾液腺機能の衰えのため、口腔内が乾燥するなどの合併症が現れることが多い。
 抗がん剤で起こる口腔粘膜炎は通常、一時的なものだが、炎症による腫れや痛みは食事を困難にし、治療効果を下げ、患者のQOLも大きく損なわせる。口腔が乾燥すると唾液による自浄作用が失われるため歯垢がつきやすくなり、歯周病や虫歯を起こしやすくさせる。また、がんの治療中は免疫力が落ち、歯や入れ歯の汚れの中にいる細菌が原因で感染症を起こすこともある。
 こうした合併症は口腔内の状態が悪い人に起こりやすい。だが近年、がん治療の前に歯周病や虫歯の治療、歯石の除去などを行い、口腔内を清潔に保てば、口腔の合併症を軽減できることが明らかになってきた。がん手術の前に口腔ケアを行うことで、術後の感染や発熱を減らし、入院日数を短くすることができるとの報告もある。もちろん、治療中や治療後も歯磨きなどで口腔内を清潔に保つことが大切だ。
                 北海道新聞 2011.1.19

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