がんの3大治療法とされる手術、抗がん剤、放射線治療は、確実に進歩している一方で、治療による副作用や合併症に苦しむ患者も多い。中でも、多くのがん医療現場で長らく適切なケアがなされて来なかったのが、口腔粘膜炎などの口腔合併症だ。ありふれた症状と軽く考えられがちだが、抗がん剤治療で40%、口腔がん、咽頭がんなど頭頸部領域の放射線治療えは100%発症する。重症化すると食事が摂れなくなり、全身状態が悪化したり、顎の骨の壊死を招いたり、感染が全身に広がって死に至る危険もある。
高齢者や脳疾患の後遺症がある場合、麻酔中など意識の低下した状態では、嚥下力(飲み込む力)が弱くなり、誤嚥(食物や細菌を含む唾液が誤って気管に入ること)性の肺炎も起こしやすい。さらに術後は、麻酔や人工呼吸の影響で痰が増えて出しにくくなり、気管や肺に溜まると肺炎の原因となる。特に口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がんなどの頭頸部がんや食道がんのような体へのダメージの大きい手術では、高い確率で肺炎が起こる。これらのがんには喫煙や飲酒の習慣が影響している。日頃から口腔内が不衛生なことが、さらに肺炎のリスクを高めることになる。
テーミス 11.2月