観血的処置のうち高頻度治療である抜歯においては、広く抗血栓療法継続下での処置が望ましいということが浸透してきている。しかし、歯科における他の観血的処置に関しては抗血栓療法中の患者をどうすべきか共通の認識がないのが現状である。JADAにて特にワルファリン療法中の患者の歯科治療に関して、PT-INRと歯科治療の種類の関係が報告されている。歯科治療のうち、印象採得、予防処置、歯内療法、保存修復処置、スケーリング、ルートプレーニング、普通抜歯、多数歯抜歯および1本の埋伏抜歯は、PT-INR<3.5(日本での治療域設定と異なる)であれば施行可能としている。PT-INR<2.5であるならば、歯肉切除術、歯根端切除術、少数歯のフラップ手術および1本のデンタルインプラントの埋入が可能とされている。歯周治療においては、歯周炎、歯肉炎の進行度により出血の可能性が増加するため、PT-INR<2.5であれば処置可能としている。止血に関しては健常人以上に注意をしなければいけないといえる。特に、処置に際しては愛護的に行うことで組織の挫滅させないよう、また侵襲を少なくするよう常に心掛けることが大切であるといえる。圧迫止血、縫合は基本であるが、エピネフリン、ゼラチンスポンジ、アテロコラーゲン等の局所止血剤の使用、止血シーネの併用によっても創部の被覆、圧迫がより確実となり、高い止血効果が得られる。適切な止血処置は持続性出血、後出血の危険性を回避につながる。