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油断できない口腔がん

口の中にできるがんを口腔(こうくう)がんと呼びます。日本人に多い胃がんや肺がんに比べると、かかる人が少ないので目立ちませんが、高齢化に伴いがん患者が増える中、口腔がん患者も毎年増えています。

 口腔がんは、歯を除く口腔のすべての組織に見られます。口腔がんの中では、舌がんが最も多く、歯肉、頬粘膜、口底、口蓋(こうがい)、口唇そして歯を支える顎骨(がっこつ)にもできます。大小の唾液腺からも唾液腺腫瘍が発現し、がんも混じっています。また、胃がんや肺がんなどが口腔内に転移する場合もあり、油断できません。

 狭い口の中では各組織の粘膜は連続していますので、がんが進むと隣の組織に広がります。歯肉にできたがんは頬や口底へ、さらに舌にも広がり、歯肉に覆われている顎骨の中へも入っていきます。また、口腔がんは、初めてできた部位の大きさにかかわらず、頸部(けいぶ)のリンパ節や肺などに転移することがあります。

 進行したがんは治療範囲も大きくなり、食べる、飲み込む、話すなどの口腔機能が著しく損なわれます。さらに、顔貌も変わり、精神的負担が加わります。

 皆さんは洗顔時に鏡に映る自分の顔を、歯磨きの時には口を見るでしょう。しかし、口の奥まではのぞかないものです。口腔がんは直視でき、指で触ることができるのに、残念ながら早期に発見されないことが多いのです。

 口の中にがんができることを知らないと、がんの初期は痛みがないため気付くのが遅れます。歯肉がんで変化に気づいても歯周病と思い、粘膜が腫れて義歯で傷がついても義歯のせいにしてしまいます。舌がんでは、舌が腫れて話しづらくなり、食べにくくなってから異常に気付きます。

 口腔ほど毎日の生活でいろいろな刺激を受ける場所はありませんが、傷ついても治りやすく、たくましい組織です。だからこそ良いときも、ちょっと悪いときも口の中をのぞき、色の変化や腫れなどが見られたら放置しないでください。2センチ以下の早期口腔がんは、がんが治った場合は、治療開始から5年後の生存率が90%以上です。早期発見、早期治療が重要です。

毎日新聞社 11月28日(月) 配信

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