民間市場調査会社の富士経済(東京)によると、2010年の電動歯ブラシ市場は前年比33%増の勢いで、今後も拡大が続く見通しだ。長年、メーカーの依頼で電動歯ブラシの製品評価をしている福岡歯科大の埴岡(はにおか)隆教授(口腔保健学)に、最近の市場動向を聞いた。口腔ケア関連市場が除々に拡大している理由の一つに、電動歯ブラシの性能向上がある。最近は「音波式」と呼ばれ、以前の機種よりもブラシの震動が速く、かつ振幅が微細で、歯垢を取り除く能力が高くなった。かつて私は、普通の歯ブラシを使った歯磨きを薦めていたが、今は電動歯ブラシを薦めている。手で磨く場合、専門家の指導を受けないと、磨き残しなどが出てくるからだ。また、口と体全体の健康の関係が解明されてきたことで、口の健康への関心も高まっている。歯周病菌は、炎症がひどい部位から血液中に入り、全身を回る。この歯周病菌が、心臓疾患や出産異常などに関与するとの研究報告が出ている。口腔ケアの関心が高まれば、全身疾患対策にもなるので、歓迎すべきことだといえる。
西日本新聞 2011.9.15