記事一覧

遺伝性血管性浮腫という病気をご存知ですか?

旭川医科大学歯科口腔外科学講座 教授 松田光悦
 遺伝性血管性浮腫(HAE:Hereditaryangioedema)というのは歯科や口腔外科の病気ではありませんが、歯科治療や口腔外科治療が引き金になり発見されることがあります。
 これは、死に至ることがある怖い疾患ですが、まだ一般的には知られていません。歯科や口腔外科での抜歯など外科的治療後、数時間から1日くらいで顔全体のむくんだような腫れ(浮腫)が出たり、舌やのども腫れて息苦しくなったりした経験をお持ちの方はいませんか?
 歯科治療だけでなく、強いストレスや足をぶつけるなどの外傷でも出現します。思春期のころから出現し、放置しても2~3日で消失します。遺伝性のため類似した症状を示す近親者が存在することが多い疾患ですが、単独に出現することもあります。放置しても3~4日で消失し、普段の状態に戻ってしまうため
 病院へも行かずそのままになっている場合、あるいは歯を抜いたせいとか麻酔のせいと勝手に考えていることが多いのではないかと思われます。しかし喉の腫れ(咽頭浮腫)が生じたにもかかわらず適切に治療がされない場合の致死率は30%と言われています。
 重症にならずに過ごしているうちは良いけれども、知らないでいると突然重症になり、死に至ることもある疾患です。決して歯科治療のせいではありません。それは、この疾患の特別な原因によるもので、浮腫が生じる発作が起きた時通常のショックに対する治療では効果がないからです。
           北海道経済 12月号 №516

過去ログ