東京都世田谷区の女子大生Aさん(19)は以前、話すことが嫌で仕方がなかった。鼻にかかった声で、たとえば「バビブベボ」と言おうとしても、どうしても「マミムメモ」になってしまう。発音を直したいと、高校2年の3月、昭和大学歯科病院(東京都大田区)の口腔リハビリテーション科を受診した。
バ行の音は、口に封じ込めた空気を破裂させて出す。口は鼻の奥に通じているため、空気を閉じ込める時、上あごの奥の軟らかい部分「軟口蓋」がせり上がり、鼻への通路を塞ぐ。ところがAさんの場合、軟口蓋がよく動かず、息が鼻の方に漏れてしまう。これが、「バ」が「マ」になる原因だった。
別の病院での詳しい検査の結果、首の骨の先天的な変形によって神経が圧迫され、軟口蓋がよく上がらないことが分かった。そこで同科が作ったのが「スピーチエイド」と呼ばれる発音補助装置。上あごにはめるプレートと、やや小さな栓が、針金でつながっている。栓の大きさや位置を調整して、栓の方を口の奥に入れることで、口と歯名の通り道を塞ぐことができる。
読売新聞 2011.8.25