厚生労働省医道審議会分科会は11月14日、刑事事件で有罪が確定するなどした医師、歯科医師計60人の行政処分の諮問を受け、44人(医師25人、歯科医師19人)の行政処分を答申、決定した。残り16人は、「厳重注意」14 人、「不問」2人。処分の発行は11月28日。
今回の処分では、2006年に奈良県で発生した医師宅放火殺人事件で、犯人である長男の供述調書の内容や心理検査の結果などをフリージャーナリストに漏らし、秘密漏示罪で有罪となった精神科医の崎濱盛三氏も対象。崎濱氏は2012年2月に、懲役4カ月、執行猶予3年の判決が確定しており、医業停止1年の処分となった。
処分が最も重い免許取消は5人で、医師2人、歯科医師3人という内訳。医師のうち1人は覚せい剤取締法違反の罪で2009年11月に東京地裁で懲役1年6カ月の有罪判決を受けた男性医師。男性医師は、2007年にも同法違反で執行猶予付きの判決が出ていた。もう一人は、病院内での未成年に対する3件の強制わいせつ、児童買春・児童ポルノ禁止法違反などの罪で、2011年12月に懲役2年6カ月、執行猶予4年となった男性医師。歯科医師3人のうち1人は、神奈川県内の大学から受け取った投資名目の出資金約5000万円を横領の罪などに問われ、2011年8月に懲役4年の判決を受けた男性歯科医師。残る2人は、強制わいせつや強制わいせつ致傷の罪で有罪となった男性歯科医師。
医業関連での処分を見ると、診療報酬の不正請求で、詐欺罪となったケースも処分の対象になった。2011年10月に詐欺罪で懲役2年、執行猶予4年となった男性医師で、医業停止3年。判決によると、クリニックの患者2人に対して、診療と投薬した事実がないのに、診療報酬を請求し、約18万6000円をだまし取った。悪質さなどが重視され、刑事事件に発展したとみられるが、厚労省は「詳細は不明」としている。そのほか、診療報酬の不正請求による処分は9人で、内訳は医師2人、歯科医師7人。いずれも医業・歯科医業停止3カ月。金額は122万円から654万円だった(金額未確定が1人)。
また、婦人科および美容皮膚科の診療所を経営する男性医師が、診療報酬による売り上げの一部を除外して所得を秘匿するなどして、2年間で8000万円以上を脱税し、所得税法違反の罪に問われ、懲役1年、執行猶予4年などの有罪判決を受け、医業停止1年の処分となった。医療事故で業務上過失致死罪に問われ、有罪になり、処分された事例はなかった。
アルコールによる道交法違反を見ると、酒気帯び運転の罪が確定した3人(医師2人、歯科医師1人)は、いずれも医業・歯科医業停止1カ月。酒気帯び運転に加えて、人身事故を起こした自動車運転過失致傷やひき逃げの罪が重なったケースの4人(医師3人、歯科医師1人)は、停止期間が3カ月から1年と長くなる傾向があった。
行政処分は、年2回実施される。過去数年の動向を見ると、2007年度111人、2008年度104人、2009年度91人、2010年度70人、2011年度89人。今回の処分は2012年度の1回目で44人であり、処分人数には大きな変動はない。