口腔ケアをする前、Sさんは必ず患者さんに聞くことがあるそうです。それは、
“日ごろ使っている口腔ケアグッズ”について。ある患者さんへのアプローチが
きっかけとなり、このステップを踏むようになったといいます。
Sさんが口腔ケアを始めたばかりのころ、70代の男性患者さんを訪ねました。
「お口の中をサッパリさせてあげたい」と新発売のミント味ペーストを使ってブ
ラッシングしたところ……。
「あれ? 患者さんの様子がおかしい!」
そして突然、患者さんが「気持ち悪い」と訴えて嘔吐してしまったのです。す
ぐに、今まで口腔ケアを行なっていた奥さんに心当たりがないか尋ねました。す
るとミント味が苦手で、塩入りの歯磨き粉を愛用していたことがわかったのです。
その話を聞いて、「いつもと違う味に驚いてしまったんだ」と気づいたSさん。
前もって、どんな歯磨き粉を使っているのか、どんな味が好みなのかを把握して
おくべきだったと反省したそうです。
患者さんは些細な変化にも敏感に反応します。できる限り、慣れ親しんだ材料
や味を選ぶこと。それが、患者さんのことを考えた口腔ケアにつながるのですね。