南砺市民病院(南砺市井波、南眞司院長)は今月から、認知症などの高齢患者が自分で食べることができなくなった場合、その原因を見極めた上で、食べる力の回復を目指す取り組みに着手した。医師や看護師、リハビリ担当者らによる専門チームを中心に今後2年のデータを蓄積し、効果を検証する。終末期患者に人工栄養法を導入するかどうかの選択がクローズアップされる中、できるだけ長く食べられるようきめ細かなケア方法を確立するのが狙いだ。同病院によると、全国的にも先駆けとなる取り組みだという。(南砺総局長・宮田求)
チームは医師、看護師のほか、リハビリを担当する理学療法士や作業療法士、言語聴覚士など計11人で構成。疾患の診断にとどまらず、認知機能、歯の状態、食事中のむせなどを幅広くチェックする。
高齢者は脳梗塞などによりのみ込む力が衰えたり、認知症が進んで食べ物そのものを認識できなくなったりして、食べるのが困難になるケースがある。こうした事情から、高齢化の進行とともに人工栄養法を導入する患者が全国的に増えたが、人工栄養法によって苦痛を引き起こすケースもある。
日本老年医学会(東京)は2012年6月、導入をめぐる考え方を示した指針を作成。導入しないことや、導入後に中止することも選択肢として示した。指針では、導入を判断する前に、自分で食べられるまでに回復する可能性がないかを十分に評価することを求めている。しかし、高齢者が食べられなくなる原因は、疾患や認知症などが複雑に絡むため、特定するのが難しく、回復の可能性も見極めにくいのが実情だ。
このため南砺市民病院は、診断結果をメンバーがそれぞれの専門的観点から分析し、原因を見極めた上で、食べる力を回復させるためのリハビリや治療など、それぞれの患者に適したケアをする。献立に薄めのおかゆやゼリーなど、のどごしの良い物を選ぶほか、食べる時の姿勢などの面で介助方法も工夫する。
患者や家族の同意を得て、今後2年にわたり、検査データなどを蓄積。改善の度合いなどを検証し、患者のタイプ別に効果の高い手法を導き出したい考えだ。
チーム代表の荒幡昌久内科・総合診療科医長は「食べられる期間を長くし、患者の生活の質向上につなげたい」としている。南院長は「チームの技術レベルをさらに高め、きめ細かにケアすれば、人工栄養法の適用を減らせる」とみている。