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【長野】口唇口蓋裂センターが7月に安曇野の病院に開設

生まれつき唇や口の中、歯茎に割れ目がある口唇口蓋(こうしんこうがい)裂の子供の治療と支援に、県内の複数の医療機関が連携して当たる「口唇口蓋裂センター」が7月1日、県立こども病院(安曇野市)に開設される。同病院などが15日、発表した。

 口唇口蓋裂は、胎児期に顔や口の形成がうまく進まず、口の周辺に裂け目が残ったまま生まれてくる先天性の症状。センター長を務める同病院形成外科の藤田研也副部長によると、おおむね500人に1人の割合で発生するという。県内では症状を持った子供が毎年34人ほど生まれている計算になる。

 数回の手術に加え、歯並びや発音異常の治療、中耳炎などの合併症対策と、さまざまな専門家による長期的なサポートが必要。ただ、全てが一施設でそろう医療機関はほとんどなく、一貫した治療態勢づくりが課題となっていた。

 センターは、県立こども病院、信州大医学部と松本歯科大の両付属病院に加え、県内と山梨県北部の5拠点病院や言語治療施設、矯正歯科と連携する全国初の「多施設間協力型」。1人の患者を複数の施設が診察、治療し、担当者が連絡を取り合って情報を一括管理する。また、県内のどこに住んでいても治療が受けやすいよう、専門医が拠点病院に出向いて手術を行うこともあるほか、通院回数の多い矯正歯科や言語治療などは各地域の施設が対応する。

 センター発足に先立ち、県立こども病院は週1回の口唇口蓋裂専門外来を新設した。藤田副部長は「治療の窓口や拠点となるセンターの開設で、情報の共有や地域との連携がしやすくなる。患者が安心して治療を受けられるようにしたい」と意気込みを語った。

 県内では98年に県口唇口蓋裂言語治療研究会(後に口唇口蓋裂治療の会長野・山梨)が発足。合同での症例検討や共通診療手帳導入などを進め、治療方針の統一化を進めてきた。毎日新聞社 5月16日(木) 配信

歯の電子カルテ:標準化 厚労省、災害時、身元確認狙い

大規模災害時の遺体の身元確認に有効活用するため、厚生労働省は今年度、現在は形式が統一されていない歯科医の電子カルテを標準化する実証事業に乗り出す。東日本大震災では多数のカルテが津波で流失したうえ、残っていても形式がまちまちだったため遺体との照合は困難を極めた。専門家は、将来的に標準化したカルテをデータベース化すれば、災害時以外にも活用できると見込んでいる。

 遺体が損傷しても歯は残る可能性が高い。警察庁によると、大震災による死者の身元確認で歯の情報が決め手になったのは1240人で、DNA鑑定の163人を大きく上回った(今年4月10日現在)。

 だが、行方不明となった人の歯の治療記録と、身元が分からない遺体の歯の情報との照合は容易でなかった。宮城県警は震災の約2カ月後から東北大の協力を得て二つの情報を照合するソフトを導入。歯科医のコンピューターの記憶装置に保存されていた行方不明者の電子カルテや、紙のカルテの収集に努めたが、歯科医ごとに形式や内容はさまざまで、統一的な形式に入力し直す必要があった。

 南海トラフ巨大地震では、国は最悪のケースの死者を約32万人と想定している。現状のままでは照合に必要な作業が膨大となり、身元確認が一層困難になることが予想される。

 こうしたことから、厚労省は6月にも検討会を設置し、身元確認のためにどのように情報を統一化すべきか協議する。今年度中に一部の歯科医で電子カルテを実験的に標準化する方針。今年度予算に事業費2100万円を計上した。

 震災前から標準化の必要性を主張してきた柳川忠広・日本歯科医師会常務理事は「南海トラフ巨大地震では歯科情報の迅速な収集システムがないと身元確認は難しい。実証事業はデータベース化を含む将来的なシステム構築のきっかけになる」と評価する。

 一方、個人情報保護に詳しい堀部政男・一橋大名誉教授(情報法)は「身元確認の目的を明示し、情報提供について広く本人同意を得ることが必要」と指摘する。厚労省は、データベース化の可否については現時点で検討対象としていない。
毎日新聞社 5月17日(金) 配信

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