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口腔衛生異常の累積は高血圧罹患リスクと関連、吹田研究より

歯周病、歯肉出血、歯数減少、咬合機能低下といった口腔衛生異常の累積は高血圧と関連しており、異常が累積した例では高血圧罹患リスクが高くなることが明らかになった。10月26日まで大阪で開催されていた日本高血圧学会(JSH2013)で、国立循環器病研究センター高血圧・腎臓科の岩嶋義雄氏が発表した。

 歯周病および歯数と高血圧の関連を示唆する報告はあるが、口腔衛生異常と高血圧罹患の関連を包括的に検討した報告はない。このため、岩嶋氏らは、同センター予防健診部と大阪大学大学院顎口腔機能再建学講座との共同で、都市部一般住民を対象とするコホート研究である吹田研究の参加者を対象に、口腔衛生と高血圧罹患の関連について検討した。

 今回の対象は、1989年9月から1994年3月に国立循環器病研究センターで健康診断を受診して2年ごとに検診を受けている吹田市在住の一般住民6485人(登録時30~79歳)のうち、心血管系疾患の既往がなく、2008年6月から2012年3月に同センターで歯科検診を受診した1643人とした(男性713人、女性930人)。

 血圧値を早朝空腹安静座位5分後に自動血圧計で2回測定し、平均値が収縮期140mmHg以上かつ/または拡張期90mmHg以上、あるいは降圧薬を内服中であれば高血圧と診断した。

 口腔機能の評価は歯科医師が行い、歯周病の評価にはCPITN(地域歯周疾患処置必要度指数)を、咬合機能の診断・評価にはEichnerインデックスを用いた。歯肉・口腔内出血はテープ法で診断し、歯数も計測した。

 その上で、中等度以上の歯周病(CPITNステージ3以上)、歯肉出血(歯肉・口腔内出血あり)、歯数減少(男性18個以下、女性21個以下)、咬合機能低下(Eichner分類でBまたはC)があれば、口腔衛生異常の罹患ありとした。

 また、歯科口腔衛生に影響を与えると思われる生活習慣(喫煙、飲酒、果物・砂糖入り飲料の摂取、運動、睡眠時間)についても、自己記入式の問診票を用いて調査した。

 対象の男女別での高血圧罹患率はそれぞれ51.6%、44.1%であった。生活習慣については、高血圧の男性の方が高血圧でない男性よりも「砂糖入り飲料の摂取量が多い」割合が有意に高く、高血圧の女性の方が高血圧でない女性よりも睡眠時間が有意に長かったが、他の項目には差がなかった。

 口腔衛生異常の罹患数と高血圧リスクの関連については、歯周病のCPITNステージ分類に歯肉出血の評価が含まれるため、「歯周病+歯数+咬合機能」「出血+歯数+咬合機能」の2つのモデルを用いて検討した。

 まず歯周病、歯数、咬合機能の罹患数と高血圧リスクの関連について多重ロジスティック回帰分析で評価したところ、男性では有意な関連が認められなかったが、女性では罹患数0の群に比べて罹患数3の群での高血圧罹患のオッズ比が1.69(95%信頼区間:1.04‐2.76、P=0.033)と有意に高かった。

 出血、歯数、咬合機能の罹患数と高血圧リスクの関連の検討では、男女ともに、罹患数0の群に比べて罹患数3の群での高血圧罹患のオッズ比が有意に高く、オッズ比は男性で2.06(95%CI:1.08‐4.05、P=0.028)、女性で1.78(95%CI:1.04‐3.07、P=0.035)だった。

 続いて、降圧薬を服用していない1148人で口腔衛生異常の罹患数と収縮期血圧の関連を検討したところ、歯周病、歯数、咬合機能の罹患数と収縮期血圧の間には女性のみで、出血、歯数、咬合機能の罹患数と収縮期血圧の間には男女ともに、罹患数が多いほど収縮期血圧が高いという有意な関連性が認められた(いずれもP<0.05)。

 これらの結果から岩嶋氏は、「累積した口腔衛生の異常は高血圧罹患と関連していた。一方、口腔衛生異常と高血圧罹患の関連は男女で異なる可能性が示唆された」と結論した。

 なお、本研究は横断研究であるため、口腔衛生異常と高血圧の関連の機序は明らかではないが、歯周病に伴う炎症、咬合機能低下に伴う栄養状態や呼吸循環の変化が関係している可能性があると岩嶋氏は推測している。

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