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粗食で「新型栄養失調」 熊谷修教授(人間総合科学大)が警鐘

「肉類や脂肪分の少ない粗食は体に良い」というイメージは強い。しかし、高齢者の栄養改善を長年研究してきた人間総合科学大の熊谷修教授は、「動物性タンパク質や脂肪の摂取が不足している多くの高齢者が、老化に伴う"新型栄養失調"の状態にあります」と警鐘を鳴らす。熊谷教授が提唱する「新型栄養失調」には、どのようなリスクがあるのだろう。

 今夏、東京都墨田区で65歳以上を対象に熊谷教授が開いた講演会。栄養不足がいかに発病のリスクを高め、老化を促進するかを説明すると、会場に苦笑いとため息が広がった。

 熊谷教授によると「老化とは体からタンパク質、水、コレステロールが抜けて栄養失調になる変化」という。栄養が不足すると筋肉や骨格、血管がもろくなり心臓病や脳卒中、感染症のリスクが上昇。転倒などで要介護になる恐れも高くなる。

 内臓周辺に脂肪がたまり肥満になる「メタボリック症候群」の予防を過度に意識して肉類や脂質を避ける中高年は多い。だが、50代以上に関しては、血液中の総コレステロール値が高い方が心臓病などを発症しにくく、死亡リスクが低くなることもこれまでの研究で報告されており、「一概にコレステロールを悪者扱いするのは誤り」という。

 「メタボ対策は高齢者には当てはまらない」とする熊谷教授は「多様な食品を摂取し、栄養失調を防ぐことが重要」と強調する。栄養状態の指標になるのは、血液中のタンパク質の約60%を占める「血清アルブミン」だ。この値が高いほど、老化の速度が遅いという。

 では、新型栄養失調にならないために血清アルブミンの値を上げ、老化を遅らせる手だてはあるのか。

 熊谷教授らの研究グループは、高齢者が避けがちな「肉類」「油脂類」などを食べる機会を増やし、食生活を改善するための「10食品群チェックシート」を作成した。使い方は、10種の食品群のうち、一日に食べたものを7日間単位で継続的にチェック。少しでもマルの数を増やすよう心掛ける。

 国内のある地域でこのチェックシートなどを使い数年間にわたり追跡調査を行った結果、利用者は10種の食品群を食べる回数がおのずと増え、血清アルブミン値が上昇。動脈硬化や筋力低下を予防する効果があったという。

 加齢による栄養状態の悪化が避けられない以上、高齢者には肉類や卵、脂肪、牛乳などを適度に摂取して補うことが健康維持のこつといえそうだ。

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