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【福島】いわきの楢葉町民仮設に歯科診療所 蒲生さん決意

東京電力福島第1原発事故に伴い全町避難が続いている楢葉町民が暮らす、いわき市の上荒川応急仮設住宅に6月にも、仮設の歯科診療所が誕生する。町内唯一の歯科医院「蒲生クリニック」理事長の蒲生正若(まさわか)さん(53)が開所準備を進める。町によると、仮設住宅に歯科診療所ができるのは県内初。「前向きにできることをやりたい」。蒲生さんは地域の歯科医師としての決意をにじませる。

 蒲生さんは原発事故で会津若松市に避難後、山形県で勤務医として1年9カ月働いた。昨年1月に勤務医を辞め、同県で生活しながら診療再開の準備を進めている。一時帰宅した際、町民が家の片付けをするなど帰還に向けた準備する姿が目に焼き付いた。復興のために「自分も何かやらなければ」。楢葉時代に通院してくれた町民のためにと、親の代から数え、約60年間「町の歯医者」として働いてきた責任感から、大勢の町民が生活する、いわき市での診療再開を決意したという。

 町は5月にも帰町時期の判断を示す。帰町に伴い高齢世帯が増えるとの見方もある。蒲生さんは高齢者のためにと、移動診療車を使った診療も検討。大型特殊や普通2種、大型2種など各種免許を取得。帰還開始後、すぐに使えるようにと診療車を購入した。

 仮設の「いわき仮設歯科診療所」は平日週4、5日営業。蒲生クリニックでは妻裕子さん(53)を含め複数の歯科医師がいたが、仮設では当面、蒲生さん1人。そのため診療できる患者数には限りがある。「震災前のようにじっくり治療したい気持ちがあるが、1人では1日20人くらいが限界かな」と複雑な思いも口にした。

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