平成26年度診療報酬改定では在宅医療に対する報酬が大幅に引き下げ
られた。昨年来、高齢者施設での訪問診療について認められた不適切
な事例の発生を防ぐ狙いだが、改定で経営が成り立たないとして訪問
診療から手を引く動きが出てきた。全国有料老人ホーム協会などが2~
3月に実施したアンケート(回答数281)では、施設に訪問診療する医
療機関のうち計13%が「廃院する」または「訪問診療を全部か一部や
める」と回答した。廃業してしまえば、介護施設やサービス付き高齢
者住宅側は新たな医療機関を探す必要があるが、簡単には見つからな
い地方も多い。定期的に診療を受けられるはずだった施設入所者は当
惑するしかない。施設への訪問診療では4月から、同一の施設で1日
に複数の患者を診た場合は「在宅時医学総合管理料」「特定施設入居
時等医学総合管理料」を最大約3/4カット。基本料金に当たる「訪問
診療料2」は半額に引き下げられた。しかしながら、この改正につい
ては多くの問題点が指摘されている。医療の内容が同じでありながら、
在宅患者と、施設入所者の間で、診療報酬に大幅な格差が設けられた
点、点数引き下げが悪質な業者排除に有効かは疑問もあり、在宅医療
そのものに大きな影響を与えかねないとの懸念も存在する。いずれに
せよ、この医療を必要とする患者に負担が及ばない方策が肝要であろ
う。