島根大医学部付属病院(出雲市塩冶町、井川幹夫院長)が、あごや顔面の骨をコンピューターグラフィックス(CG)で3次元データ化し、手術前にシミュレーションできる最新鋭の医療ソフトを今年度から導入した。「手術の様子がイメージしやすく分かりやすい」と患者の評判も上々という。
同病院歯科口腔外科学講座の管野貴浩講師(38)によると、導入したのはベルギーに本社がある企業が開発したソフト。CT(コンピューター断層撮影)装置で撮影した顔からあごのデータを画像処理し、患者の顔の形や骨の形状をほぼ正確に立体で再現。手術で切開する部分などを事前に確認できる。東京や大阪、福岡など全国数カ所の医療機関しか導入していないという。
島根大病院が連携する松江、隠岐の島、浜田、益田にある各医療機関の患者にも利用範囲を拡大している。十数年前、がんであごの骨の右半分を切除した患者の場合では、残された左半分の骨のデータを参考にして右半分の骨をCGで再現し、骨を再生する手術に応用した。手術時間の短縮効果もあったという。
ソフトを利用することで、0・1ミリ単位でメスを入れる位置を変えたり、手術による顔の表情の変化をチェックしたりできる。管野さんは「歯のかみ合わせやあごの動きは繊細。少しのずれでも生活の質に大きく影響する。食べる、話すなどの機能を戻すことが重要」と話している。