肺炎にはすぐに治る軽いものから命に関わる重いものまでありますが、高齢になるほど死亡率が高く肺炎で死亡する人の多くは65歳以上です。
肺炎の原因になる病原体には、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌(かんきん)、マイコプラズマやクラミジア、各種のウイルスなどがありますが、高齢者の肺炎の原因の多くは肺炎球菌です。体力の低下した高齢者では重症の肺炎になったり、時には死亡することもあります。そこで肺炎にかかってから治療するのではなく、かかる前にワクチンで予防することが推奨されています。
肺炎球菌ワクチンは1回の接種で5年間、肺炎球菌による肺炎を予防できます。今までは、肺炎球菌ワクチンを接種する場合、全額(8000円程度)を自分で支払う必要がありました。しかし、この10月から費用の一部を自治体が負担することが決まりました。
自分で払わなければならない金額は、所得の有無で変わりますが、おおまかに「半分ぐらいの値段で予防接種してもらえる」と考えていただけるとよいかと思います。また希望すれば誰でも接種できるわけではなく、年齢や病気の有無などで細かい決まりがあります。今までに肺炎球菌ワクチンを接種したことのある人も公費補助は受け付けられません。今年度は65歳、70歳、75歳……と5歳刻みの人が接種対象になります。どこの医療機関でも接種ができる訳ではないので、かかりつけの医師に相談されると良いでしょう。
一方、重度の認知症の方に発症する誤嚥性(ごえんせい)肺炎は、ワクチンでは予防できません。誤嚥性肺炎になりやすい高齢者には嚥下(えんげ)しやすい「トロミ」を使った食事を食べてもうらうことで肺炎の予防ができます。トロミの入ってない水やお茶を認知症の人に飲ませるとムセてしまい、食べ物が胃ではなく肺に入ってしまうことがあります。これが誤嚥性肺炎の原因です。トロミは調剤薬局などで買うことができます。簡単ですので、家庭で高齢者を介護されている方は薬剤師さんに相談されると良いでしょう。