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(ひと)植田耕一郎さん 食べるリハビリを広める歯学部教授

 24年前、リハビリ専門病院に赴任したことで運命が変わった。

 患者の大半は高齢者。食べ残しなどの汚れをとって、何度治療してもまた虫歯ができてしまう。

 「なぜ?」。脳卒中後のまひが残るお年寄りの歯の周りはホウレン草や白身魚がべったり。のみ込めずに残っていた。口の中をきれいにする唾液(だえき)が減り、虫歯もできやすくなっていた。「必要なのは食べるための口のリハビリだ」と気づいた。以来、従来の歯科治療の枠を越える方法を模索する。

 日本歯科大の助教授だった頃、口から食べられず、約5年間、鼻に通す管から栄養をとっていた高齢の女性と出会った。スポンジがついたブラシで頬の内側を上下にこすって刺激し、清潔にした。口の周囲のマッサージなども3カ月続けると、スプーンで1口、ゼリーをのみ込んだ。さらに1口と量が増えていった。声をかけると以前は無反応だったのが、うなずいた。「あー」と声も出した。「命のワンスプーン」と名付けた。

 食べるリハビリを追求するため2004年、母校の日大歯学部に戻り、摂食機能療法学講座の初代教授に就いた。午前は外来、午後は往診、夕は病棟へ。週末は各地で講演と忙しい毎日をおくる。

 今夏、初めて出版した新書の題名は「長生きは『唾液』で決まる」。「医療はひたるものではなく利用するもの。最高の主治医は自身です」

顔面補綴新技術、3Dプリンタで実現【米国眼科学会】

米国眼科学会(AAO)は10月20日、癌の摘出後や先天性奇形に対処する顔面補綴に3Dプリンタを利用する研究を紹介した。同学会の第118回年次総会にて発表。

 米国では毎年2700人以上が新たに眼の癌と診断されている。救命のために眼球や眼窩の組織の摘出手術を受ける患者もいる。従来の顔面補綴の価格は1万-1万5000ドル程度で、技工士による手作りのため作成に数週間かかるほか、多くの場合は保険対象外であるため、全額が患者の負担となるという。今回の研究では、摘出手術を受けた患者のために安価な顔面補綴を提供することを目指し実施された。

 マイアミ大学の研究チームは、患者の欠損のない顔面側をモバイルスキャンでスキャニング。コンピューター処理で画像を左右反転させ、3Dプリンタで欠損部分をカバーする顔面補綴を作成する技術を開発した。従来の方法よりもはるかに安い値段で、短時間に顔面補綴を作成できるという。また、3Dプリンタでは特殊なナノ粒子の混合物を使用するため、より多くの肌の色に対応できるほか、経年による色あせ等の劣化も抑制。交換が必要な場合には、同じものをボタンひとつで再製造できる。

 研究者は「今後は、モバイルスキャンしたデータをマイアミの研究所に送信してもらうことで、世界各地で顔面補綴を必要としている人に対応できるようにしたい」と述べている。

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