記事一覧

急性期脳血管疾患患者の嚥下機能改善に影響を及ぼす因子の検討

諸 言
  わが国では、毎年約30万人に新たな脳卒中が発生しており、脳卒中患者の総数は約280万人に上る。発症後嚥下障害を来たす患者は、急性期では30~65%、慢性期まで遷延する患者は約10%といわれており、摂食嚥下障害の原因疾患の約半数を占めている。脳卒中急性期は、早期座位・立位訓練、早期歩行訓練、セルフケア訓練などと同様に摂食機能療法の重要性が示され、グレードAに位置づけられている。
  その中で、嚥下障害を有する脳卒中患者における発症7日以内の嚥下と食事に対する摂食機能療法は、6ヶ月後の予後を改善し、呼吸器感染症を減らすことが報告されている。したがって、脳卒中患者においては、急性期からの摂食機能療法がきわめて重要であるため、急性期病院では栄養サポートチームや摂食嚥下チームなどにより、摂食嚥下機能のスクリーニング、摂食機能療法など種々のアプローチが展開されるようになった。
  チームによるアプローチには、多職種の熱意が不可欠である。しかし、実際の臨床現場では、医療者側の熱意だけでなく、患者の意欲が得られなければ、十分な摂食機能療法の持続が困難であることを経験する。そこで、脳血管疾患患者の嚥下機能改善に影響する因子を、これまでの報告でみられた年齢や誤嚥性肺炎発症の有無等の身体状況に加え、うつや意欲といった精神状況も含めて検討した。
 結 論
  脳血管疾患患者において、嚥下機能改善群、不変・低下群の2群間で年齢や疾患発症前ADL、入院時Alb等に差はみられなかったが、入院時BMIは不変・低下群で有意に高値であり、ST介入時の意欲は改善群で有意に高値であった。ロジスティック回帰分析の結果、嚥下機能改善に影響するのは、入院時BMI、ST介入時の意欲であったことから、患者の体格や意欲が嚥下機能改善に影響する可能性が示唆された。摂食機能療法は、患者の意欲を高められるようなアプローチを他職種が連携して行うことの必要性が示唆された。

過去ログ