米3M(スリーエム)の日本法人スリーエムヘルスケア(東京)の「ダイレクト クラウン」は、奥歯の治療に使う白いかぶせ物を作る材料だ。本格的なタイプは高価で手が届きにくいが、歯型を取る手間などを省き、比較的安い治療費で実現。歯科医がその場で形を整え、1日で作れる便利さが評判を呼んでいる。
歯のかぶせ物で金属製は保険適用の対象となるが、見た目が良くないのが欠点だった。しかし、白いかぶせ物でセラミックス製の見栄えの良いタイプは適用対象外で、治療費は1本当たり平均10万円前後と高い。「白い歯を手軽に手に入れたい」という患者の声に応えた「ダイレクト クラウン」は1本3万円前後で済むという。
大臼歯と小臼歯に対応し、サイズはそれぞれ大小の二つがある。人に見られやすい小臼歯は色を2種類用意した。セラミックスに樹脂を混ぜ合わせており、ゴムのように軟らかく、あらかじめ歯の形になっている。歯科医は患者の歯に合わせて専用の機器などで形を整え、特殊な光を当てて瞬時に固める。
従来のかぶせ物は歯型を取った上で歯科技工士が作るため、時間と費用がかかるが、技工費用などのコストを削減できて患者も1回の通院で済むのが利点だ。
もともと3Mが応急処置用の仮歯として世界で販売したものを改良した。開発担当の鈴木順(すずき・じゅん)マネジャーは「強度が高く変色しにくい長所や、日本人歯科医の器用さに着目して開発した」と話す。
2013年10月から順次、歯科医向けに販売。治療を受けられる歯科医院は専用ホームページで検索できる。小臼歯のみ保険適用が認められた別タイプの白いかぶせ物も扱っており、「白い奥歯市場」の拡大を目指す。