妊婦の歯周病は早産(妊娠22~36週の出産)を促し、低体重の赤ちゃんが生まれる恐れがあることが県内医療関係者の間で指摘されている。米国では歯周病によって早産リスクが7倍になるという報告もある。医療関係者は、早めに歯科健診を受けてほしい―と、妊婦に呼び掛けている。
青森市の40代女性は3年前、妊娠24週弱という超早産で1000グラム未満の女児を産んだ。当初、開業医にかかっていたが、突然の破水、容体急変で市内の県立中央病院に緊急搬送され出産した。女性は「早産の理由は、歯周病の影響だった可能性がある」と医師に言われたといい、「歯科医を受診する時機を逸していた。自分と同じ体験をしないよう、他の妊婦さんには歯科健診を受けた方がいいとアドバイスしている」と語った。
元県病総合周産期母子医療センター長で現在、青森労災病院(八戸市)産婦人科の佐藤秀平部長は「歯周病によって早産となった妊婦を何人も診てきた。早産と歯周病の関連は確実にある」と語る。佐藤部長によると、歯周病菌によって産道の炎症が強くなり、子宮を収縮させる物質が増えることにより、早産しやすくなるという。
県病では専門検査技師が歯周病を含めた菌の検査を行い、歯科と連携して治療に当たり早産防止に努めているが、高度医療機関にかかる前に、歯科健診を受け、歯周病があれば治療した方が良い―と妊婦に呼び掛けている。
県歯科医師会の波多野厚緑理事は、歯周病の人とそうでない人を比べた早産リスクが、米国の調査(1996年)では7.5倍、国内の調査(2003年、鹿児島大)では5倍に高まることなどを紹介。「歯周病は喫煙や飲酒、高齢出産よりも早産になる確率が、はるかに高い。20代で重症な人はほとんどいないが、30代後半を過ぎると、急に罹患(りかん)率が高くなる。正常出産するためも歯周病があればきちんと治し、予防を心掛けることが大切」と話す。
県内自治体の中には、妊婦の歯の健康を重視して健診を実施している市町村がある。県歯科医師会が昨年7月に行った調査では、弘前、十和田、三沢、おいらせ、七戸、六戸、横浜、東北、西目屋、六ケ所の10市町村で妊婦の歯科健診を行っている。このほか、八戸市が健診実施を検討中。
七戸町は13年度から、母子手帳配布時に妊婦に歯科健診を受けるように勧め、健診1回分の費用を無料としている。町健康福祉課の担当者は「妊娠するとホルモンのバランスが崩れ、虫歯になったり歯周病になる可能性が高まるので、歯科受診を勧めている」と話した。