秋田県央部の60代女性が昨年秋、医療費の支払いを負担に感じて医療機関の受診をためらい、がんで亡くなっていたことが明らかになった。亡くなる直前に救急搬送されたものの、手遅れだった。女性は国民健康保険の保険料(税)を滞納し、医療費を窓口でいったん全額支払わなければならない「被保険者資格証明書(資格証)」の交付を受けていた。
昨年秋の夕方、女性は近くに住む親族を通じて「自宅で動けなくなった」と119番した。秋田市の中通総合病院に救急搬送され、末期がんと判明。手術ができないほど進行していた。
女性はそのまま入院し、同病院医療福祉相談室の医療ソーシャルワーカーに「以前、腫瘍があると診断を受けた。ただ、医療費が払えないので通院しなかった」と打ち明けた。
女性はアパートに1人暮らしで、パートを二つ掛け持ちしていた。支払う保険料は月1万3千円程度だったという。医療ソーシャルワーカーは「仮に払ったとしても、収入が少ないため、通常の自己負担(医療費の3割)も重荷になると考えたのではないか」と推測する。
医療ソーシャルワーカーは女性の資格証について地元自治体へ相談。女性が重病であることを説明し、有効期限は短いが窓口負担が軽くなる「短期被保険者証(短期証)」に切り替えてもらった。女性は働けなくなって収入も途絶えたため、生活保護も申請する予定だった。だが、入院から約1週間後、息を引き取った。
地元自治体によると、女性は保険料支払いの相談に訪れておらず、女性宅は民生委員の訪問対象でもなかった。このため女性の家計状況や健康状態を把握しておらず、行政のセーフティーネット(安全網)ですくい上げることができなかったという。