11月4日に開かれた中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)で、医科歯科連携による栄養管理の推進について議論が行われた。厚生労働省はチーム医療に関する診療報酬項目のうち、栄養サポートチーム加算の要件に歯科医師の配置を評価する案を提示したが、診療側からは「医師の指示でも口腔ケアをできるようにしてはどうか」との意見が出た(資料は厚労省のホームページ)。
現行の栄養サポートチーム加算では、歯科医師の配置について「望ましい」とされているが、施設要件にはなっておらず、歯科医師の参加で口腔清掃や義歯の管理等の口腔管理の向上が期待されるものの、歯科医師が勤務している医療機関は少ない。厚労省は(1)歯科医師が同チームに配置されている場合を評価、(2)歯科医師がいない医療機関で、院外から歯科医師が訪問し、院内スタッフと栄養サポートを実施した場合を評価――の2案を提示。具体的には、週1回程度の回診・カンファレンスの実施や治療実施計画の作成、退院時の指導等を行う。
日本医師会常任理事の松本純一氏は、「口腔清掃などの簡単な口腔ケアは、(歯科医師ではなく)医師の指示でも可能にしてはどうか」と提案。厚労省は「口腔管理、特に清掃方法や義歯の使用方法については、患者の口腔内の状態の把握が必要なので、専門的な職種の歯科医師が関与した上で、歯科衛生士等に指示することが必要だと考えている」と難色を示した。
松本氏は、院外から訪問した歯科医師の指示をした場合や歯科衛生士との連携についても質問し、「1回指示を出したらその指示が続くという解釈なら良いが、なかなか歯科医師が来られず、歯科衛生士がいる場合は、簡単な口腔清掃なら医師も(指示が)できるとした方がいいのでは」と再度提案した。日本医師会副会長の中川俊男氏も、歯科医師の配置は「望ましい」という現行の評価にとどめるべきだと主張した。
医師側の提案に対し、日本歯科医師会常任理事の遠藤秀樹氏は「歯科医師と歯科衛生士は常に一緒とは限らない。必要な診断、指示を受ければ、歯科衛生士が続けることはできる」と回答。厚労省は「歯科医師を専任にすることなどを考えているのではなく、必要なケースについては連携してやり、その部分を評価するという考え」と応じ、歯科医師の配置は評価する方針を強調した。
歯科医師の連携のメリット
千葉大学医学部附属病院歯科・顎・口腔外科教授の丹沢秀樹専門員は、松本氏の質問に対し、「看護師による従来の口腔清掃は効果あるが、歯科的な管理をしっかりやれば、より良くなる。口腔清掃でも歯肉から血が出ている時にその原因を判断することもある。口腔ケアは清掃だけでなく、口腔機能管理として病巣の解剖や抜歯、治療も入る。診断や判断は口腔の専門家である歯科医師が必要」と訴えた。