県障害児(者)・高齢者歯科口腔保健センター(和歌山市手平2)で1年以上、障害などのため一般の歯科医院での治療が困難な患者に対し、鎮静薬を点滴して実施する治療ができなくなっていることが県などへの取材で分かった。容態の急変に備え設置していた全身麻酔器の故障などが原因。県は新たな全身麻酔器を購入したが、治療の再開時期は未定という。【成田有佳】
センターは県歯科医師会が県の補助を受けて開設し、2006年度から指定管理者として運営している。診療は週2回で、昨年度の患者は延べ1774人。
中止されているのは機械音に敏感に反応したり、治療中に動いたりする患者のために月1回、専門の歯科麻酔科医が静脈内鎮静法を使って実施していた治療。学会のガイドラインで呼吸停止などに対応できるよう関連する機器などの常備が必要とされ、県は県歯科医師会に全身麻酔器を無償貸与していたが、14年9月に故障した。
県歯科医師会はこの時初めて、全身麻酔器の保守サービス期間が切れていたことに気付いた。製造元の後継業者に修理を依頼したが、既に部品がなく修理できないことが判明。昨年になり、大阪府内から来ていた歯科麻酔科医が全身麻酔器がなくては続けられないとして治療を取りやめ、一部の患者は大阪の施設に通院しなくてはならなくなった。
県歯科医師会は昨年3月、県庁を訪れて事態を報告。県が昨年12月、全身麻酔器を購入して再び無償貸与したことで、新たに治療に来てくれる歯科麻酔科医らの医療チームが見つかれば治療が可能となった。県歯科医師会は「数カ月以内に再開したい」としているが、まだ具体的な日程は決まっていない。
故障から新たな全身麻酔器の購入まで1年以上経過している点について、県歯科医師会は故障直後に県に口頭で報告したと釈明。一方、県医務課は「重要な内容であればメモにするはずだが残っていない」として、昨年3月までは報告を受けていないとの認識だ。
県医務課の担当者は「県歯科医師会との間で意思疎通ができていなかった。今後は、機器の耐用年数などのリスト化を図る必要がある」としている。