成人の9割が経験しているという虫歯。予防には日ごろの歯磨きに加え、定期的な歯科検診を受けることが大切だ。しかし県民で定期検診を受けているのは2割弱しかおらず、全国平均の5割弱を大きく下回っている。今月4~10日は「歯と口の健康週間」。歯科医師らは「いつまでも自分の歯で食事をして健康寿命を延ばせるよう、口腔(こうくう)ケアを見直して」と呼び掛けている。
県健康増進課によると2011年度、定期検診を受けた20歳以上の県民の割合は17・9%。04年度の10・5%からは増えたが、全国平均の47・8%(12年度)に比べると意識の低さが浮き彫りになる。
県歯科医師会理事で佐野歯科(宮崎市)の佐野裕一院長は「本県では、歯がずきずき痛んだり、歯茎が大きく腫れたりしないと歯科を受診しない傾向がある」と危惧する。
受診率を年代別に見ると、男性の20~50代は15%以下で、特に働き盛りの40代は3・4%と極端に低い。女性は20代が33・3%あるが、30代になると8・0%と激減している。
佐野院長は「女性の30代は育児に追われ自分の口のことが後回しになっているのではないか」と推測。その上で「虫歯の原因となる細菌は1歳半から2歳半が一番もらいやすいといわれるため、子どもと接触する保護者の口腔ケアは大切」と指摘する。
受診率の低さは県民の歯の健康状態に直結する。60歳で自分の歯が24本以上ある人の割合は全国81・3%に対し、本県は49・7%。また永久歯の抜歯の最も多い原因は全国だと歯周病だが、本県は虫歯というデータがある。
そして歯の健康状態は体にも影響する。歯周病は動脈硬化や心臓病、早産などのリスクも高める。動脈硬化は、歯周病菌やその菌が持つ毒素が歯茎の血管から侵入することで引き起こすとされる。また東日本大震災後の被災地では介護が必要な高齢者が口腔ケアを受けられず、口内の細菌が肺に入って起きる誤嚥(ごえん)性肺炎により亡くなったとされる事例がある。
行政も受診率の向上を課題としており、県内では14市町村が成人の歯科検診への補助を実施。宮崎市では04年から歯周疾患検診事業を行い、現在は30歳から5歳刻みで70歳まで500円で受診できる。ただ対象者にはがきで通知しているが、実際の利用率は15年度で7・3%と低迷。同市はまず2桁達成を目標に、未受診者への通知はがきを再送するなど対策を図る。
定期受診は、虫歯や歯周病の早期発見が可能になるだけでなく、歯科医師らから歯ブラシの選び方や磨き方など、日常のセルフケアの方法を教えてもらえるメリットもある。佐野院長は「予防に勝る治療はない。一般的に検診は半年に1度とされるが個人によって差があるので、ぜひかかりつけの歯科で検診を受け、相談してほしい」と話している。