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ALS発症メカニズムの一端明らかに

大阪市立大学は8月24日、家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子であるオプチニューリン(optineurin)の研究を行い、ALS発症メカニズムの一端を明らかにしたと発表した。この研究は、同大学医学研究科分子病態学の徳永文稔教授らの研究グループが、東京大学大学院理学系研究科の濡木理教授、和歌山県立医科大学神経内科の伊東秀文教授らと共同で行ったもの。研究成果は、英科学雑誌「Nature Communications」オンライン版に8月24日付けで掲載された。

 ALSは、運動神経細胞(ニューロン)が選択的に侵される神経難病で、多くは意識がはっきりしたまま、筋力低下のため歩行困難や構音障害となり、呼吸不全に至るといわれている。ALSのおよそ90%は、発症原因が不明な孤発性ALSだが、約10%は遺伝子変異が関連する家族性ALSである。これまでに約20の原因遺伝子が見出され、その解析からALS発症機構解明を目指す研究が進められている。オプチニューリンの遺伝子変異がALSに関わることは2010年に日本で発見され、重要な病因因子であることが明らかにされている。

 研究グループは以前から、ユビキチンという低分子たんぱく質が特異的な連結をした「直鎖状ユビキチン鎖」を発見し、この特異的構造体がたんぱく質分解ではなく、炎症や免疫に重要なNF-кBを介したシグナル伝達経路を活性化することを見出していた。

 そして今回の研究で、オプチニューリンが直鎖状ユビキチン鎖に選択的に結合し、NF-кBや細胞死を抑制していることを突き止め、実際にオプチニューリン変異に起因するALS患者の運動ニューロンでは、直鎖状ユビキチン鎖や活性化NF-кBが蓄積し、神経細胞死を引き起こしていることを明らかにした。

 今回の研究から、たんぱく質分解ではなく、炎症惹起に関わる直鎖状ユビキチン鎖がサイトゾル凝集体に局在しており、神経細胞死に関わるという全く新しい知見が得られた。今後、孤発性ALSや他の遺伝子異常に由来するALSなど研究の範囲を広げることで、同研究で見出されたメカニズムの重要性を解析することが必要。さらに、アルツハイマー病やパーキンソン病などユビキチン陽性凝集体形成を伴う各種神経変性疾患において、どのような連結様式のユビキチン鎖が蓄積しているか解析することで疾患発症を引き起こす細胞機構解明の新たな展開が期待されると、研究グループは述べている。

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