東日本大震災で被災した高齢者の調査で、経済状況が悪化したり家屋が被害を受けたりした人は、歯の本数が減る危険性の高いことが分かったと東北大などのチームが28日、明らかにした。
チームによると、災害の前後で歯の本数を調べた研究は世界的にも例がないという。避難所で水や物資が不足し口の衛生状態が悪化したほか、避難生活のストレスなどが背景にあるとみている。
高齢者の歯の減少は、心身の健康状態に悪影響を与えるとされる。東北大の松山祐輔(まつやま・ゆうすけ)歯科医師は「被災者は歯を失う可能性が高いことがはっきり分かった。避難所でも歯磨きができる環境の整備のほか、家屋の早期再建や、医療費の免除といった継続的な支援が必要だ」と話している。
チームは、宮城県岩沼市の65歳以上の高齢者を対象に、同じ人を震災前の2010年と震災後の13年に調査。約2300人分を分析したところ、震災後に歯の本数が少なくなっていたのは8・2%だった。
震災で経済状況が「苦しい」と答えた人のうち、歯が減ったのは12・4%だったが、「変化なし」や「良い」では計7・4%だった。
家屋が全壊した人で歯が減ったのは15・5%で、被害がなかった人の7・9%よりも、7・6ポイント多かった。