高齢者に多いむし歯を「根面(こんめん)う蝕(しょく)」(歯の根っこの面にできるむし歯)といいます。歯は歯茎より上の歯冠(エナメル質が覆う)と歯茎の中に埋まっている歯根でできています。加齢により歯茎が痩せ、高齢者になると若い時は歯茎に埋もれている歯根が出てきます。歯根は歯冠の7分の1の硬さにすぎません。つまり歯根の表面はとても軟らかいため、むし歯になりやすいのです。その歯根の表面にできやすいむし歯が根面う蝕です。
根面う蝕は歯の中にある神経に近い位置から始まり、軟らかいため、進行が速く神経に達しやすくなります。神経がむし歯のばい菌に侵されると、ひどい痛みが出るだけでなく、むし歯が急速に進み治療が難しくなります。また、歯根の表面全周に進行しやすいことから、歯が折れて根だけになり、抜かないといけなくなるケースも少なくありません。
若い時に比べて歯茎が痩せ、歯と歯の隙間(すきま)が広くなり、汚れがたまりやすくなることもその原因の一つです。高齢者になると唾液の量が減る傾向にあります。唾液はむし歯予防には重要な役割をします。食べかすを洗い流し、また、むし歯になりかけた表面を再石灰化させ、むし歯になりにくくする力があるので、唾液の量、質は大変重要なポイントになります。唾液の減少は加齢によるものですが、薬の副作用や全身的な病気でも起こります。
根面う蝕はどうしたら予防できるのでしょう。誤った歯磨きにより歯周病が進み、歯茎が下がります。圧力がかかり過ぎた歯磨きも歯茎を傷つけ、押し下げることとなります。適当な硬さと大きさの歯ブラシや歯間ブラシを使い、お口の中を常に清潔に保ってください。
フッ素入りの歯磨き剤やうがい薬の使用も効果が期待できます。唾液の量を増やすマッサージや運動もあります。不規則な生活や過労、過度のストレスにも気をつけてください。治療後の歯でも新たに根面う蝕になることが多いので、歯科医院での定期健診や各自に合ったお口の清掃指導を受けることをおすすめいたします。