海洋汚染が問題になっているプラスチックごみを減らす取り組みが、欧州で
加速してきており、飲食や小売店でストローの配布をやめたり、食器を再生可
能な素材に変えたりする動きが広がっています。
こうした背景には、プラスチックごみの投棄による海洋汚染の深刻化があり
ます。世界経済フォーラムが2016年に示した報告では、少なくとも毎年800万
トンが世界の海に流れ込んでいます。また、1億5千万トンを超すプラスチッ
クごみが海中に漂い、適切な対応がとられないと2050年までに魚の総重量を上
回ると推計されています。
プラスチックは分解に長い年月がかかり、深い海に沈み込めば除去が難しく
投棄されて漂うプラスチックごみは海の生態系を傷つけます。有害なプラスチッ
クを食べたり、微細な粒子を飲み込んだりして体内に取り込むことで、600種を
超す海洋生物が害を受けているとの報告もあります。
英パブ運営大手のJDウェザースプーンは今年に入り、ストローを客から求
められない限り出さないようにしています。素材もプラスチックから微生物で
自然分解される紙製に変える等リサイクルが困難なごみを減らす対策を取って
おり、「お客様の反応は上々」とのことです。
また、食品世界最大手のネスレ(スイス)はこの4月、2025年までに自社製品
の容器を再利用や再生が可能な素材に全面的に切り替える方針を表明しました。
先月開催された主要7カ国首脳会議(シャルルボワ・サミット)では、2030
年までのプラスチック代替品への切り替えなどをうたう「海洋プラスチック憲
章」がまとめられましたが、日本は米国とともに署名を見送りました。
しかし、シアトル市では、飲食物を販売するビジネスでのプラスチック製の
ストローや食器の使用を禁止する法律が、今月1日から施行されました。マリナー
ズの本拠地セーフコ・フィールド、そしてシーホークスやサウンダーズの本拠
地センチュリーリンク・フィールドは、昨年9月からプラスチック製ストローを
使用していません。
一方、日本でも政府の取り組みや事業者の自主的な流出抑制を促す改正法が
国会で成立し、今夏に施行される見通しです。
環境を守るためには国ぐるみの対策が必要ですが、消費者の意識改革も欠か
せません。ペットボトルは必ずリサイクルに出す、レジ袋はできるだけ使わな
い等のことを私たちも心掛けたいものです。