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舌ピアスは歯周病を悪化させる?

舌ピアスはセクシーでクールなファッションアイテムとして一部の若者に人気だが、口腔内の健康状態に極めて悪い影響を与えることが、バーゼル大学(スイス)のClemens Walter氏らによる研究から明らかになった。この研究では、舌ピアスを付けると歯周病のリスクが高まることが示唆された。一方で、リップピアス(唇のピアス)ではこうしたリスクの上昇はみられなかったという。この研究結果は欧州歯周病学会(EuroPerio9、6月20~23日、オランダ・アムステルダム)で発表された。

 Walter氏らは今回、同大学の歯科医療センターで治療を受けた1,400人以上の患者のうち、舌ピアスまたはリップピアスのいずれか、あるいは両方を付けている患者18人(このうち14人が女性)を対象に、ピアスによる歯や歯茎の健康状態への影響について後ろ向きに検討した。対象者の平均年齢は28.3歳で、3人は舌ピアスとリップピアスの両方を付けており、計14カ所の舌ピアスと計7カ所のリップピアスで評価した。

 その結果、舌ピアスを付けていると、ピアスに近接する歯の歯茎ほど歯周病検査(プロービング)時の出血の頻度や付着の喪失(アタッチメントロス)の有無、歯周ポケットの深さといった歯周病の評価指標が悪化していることが分かった。一方で、リップピアスではこうしたピアスによる悪影響は認められなかったという。

 このほか、同学会ではブリュッセル(ベルギー)の歯科医であるBernard Loir氏が、舌ピアスが原因で歯が正常な位置からずれてしまった27歳と32歳の2人の女性患者について報告した。女性は2人とも口の中のピアスが歯に当たって、長年にわたり歯茎の出血や感染などのトラブルに悩まされていた。最終的に歯茎が腫れて歯がぐらつくようになり、位置もずれてしまったため、舌ピアスを付けてから8~10年後にピアスを外さざるを得なくなった。Loir氏によると、2人とも外科治療や抗菌薬投与を受けたが、失われた組織を元通りに再建することはできなかったという。

 WalterとLoir両氏によれば、舌ピアスがあると飲んだり食べたりするときに邪魔になり、話しづらくなるほか、舌ピアスが気になって噛んだり、歯や歯茎に押し付けたりしていると口腔内の炎症や損傷につながりやすいという。

 米国歯科医師会のスポークスパーソンであるTyrone Rodriguez氏は「舌ピアスを付けることは、口の中に小さな建物解体用の鉄球があるようなものだ」と表現する。固いピアスが歯に当たってできた微小なひびは、最終的には大きなひび割れになって歯が欠けたり、割れたりする。また、口腔内にある500種類以上の常在菌は、傷口や病変ができると日和見感染を起こしやすく、感染症リスクを上昇させるという。

 Walter氏によると、口腔内の健康状態が気になる人は、できるだけ早く舌ピアスを外すこと以外に対策はないという。どうしても外したくないという人は、取り外しできるピアスを使用して常に清潔に保つことが重要だと助言している。なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

「かむ力」が認知機能と関連、入れ歯でもOK 阪大など

高齢者の認知機能は、「残っている歯の数」よりも「かみ合わせる力」と強く関連していたという研究結果を、大阪大などのグループがまとめた。かむ力が強い方が脳への刺激になり、認知機能に関わるとされるビタミン類などの栄養の摂取にもつながっている可能性がある、としている。

 兵庫県と東京都に住む約2千人(69~81歳)に対し、2010~11年、残っている歯の本数や、専用のフィルムで「かむ力」を調べ、普段の食事内容などを聞き取った。また、記憶力などを問う認知機能のテストを受けてもらい、関連を調べた。その結果、かむ力が強かったり、緑黄色野菜を食べたりしている人ほど、テストの成績がよい傾向にあった。

 これに比べると、歯の本数と成績に、強い関連はみられなかった。入れ歯によって、かむ力を補っていた可能性があるという。大阪大の池辺一典 教授(高齢者歯科学)は「認知機能を保つうえで、歯を残すことも大切だが、入れ歯などでそしゃく機能を維持することが、それ以上に重要だ」と指摘している。


(朝日新聞 DIGITAL 6月2日より)

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