【ケンブリッジ共同】ユニークな科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式が12日、米マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大で開かれ、30人の5歳児から唾液のサンプルを集めて1日の分泌量を調べた明海大保健医療学部の渡部茂(わたなべ・しげる)教授(68)らの研究チームが化学賞を受賞した。日本人のイグ・ノーベル賞受賞は13年連続。
渡部教授は共同通信に「権威があるというか、誰もがよく知っている賞をもらえてうれしい。よくこんな論文を見つけてくれたと思う」と喜んだ。
授賞対象となった論文は、渡部教授が北海道医療大歯学部の助教授だった1995年に同僚らと執筆。唾液の分泌は食事中に大幅に増えるが、当時は子どもの食事中のデータがなかった。
渡部教授らは男女15人ずつの5歳児に重さを量ったごはんやソーセージ、漬物など6食品をかんでもらい、のみ込む直前に吐き出させて再び計量し、2日間にわたり唾液量を測定。食事以外の時間と合わせて「1日に計500ミリリットル」という分泌量の推計値を得た。予想していたより少なかったという。
もっと幼い子どもを調べることも考えたが、うっかりのみ込んでしまう子どももおり「指示を守ってもらえるのは5歳児が限界だった」と話した。
渡部教授は受賞スピーチの際、子どもの頃に数々の実験に協力させた息子3人と一緒に登壇。唾液量の測定を実演し、500ミリリットルのペットボトルを掲げると、会場から大きな笑いが起こった。
小児歯科医でもある渡部教授は「子どもにとって唾液はオレンジジュースなどの酸から歯を守るとても大切なもの」と強調した。