インフルエンザ対策に使われるアルコール消毒について、ウイルスがたんなどの粘液に含まれた状態の場合、殺菌効果が弱まるとの研究成果を京都府立医大の広瀬亮平助教(感染病態学)らがまとめ、米科学誌の電子版に掲載された。広瀬助教は「アルコール消毒だけでは、周囲に感染を広げかねず、手洗いが重要」と注意を呼びかける。
広瀬助教らは、食塩水と粘液のたんに、それぞれA型ウイルスを含ませ、一般的な消毒薬(濃度80%のエタノール)を作用させてウイルスが不活性化するまでの時間を比較した。その結果、食塩水中のウイルスは30秒以内で殺菌できたが、たんの中では2分たっても感染力が維持されていた。たんが渇いた状態で調べると、30秒以内に殺菌でき、粘液の状態では効果が弱まる可能性が高いという。
広瀬助教は「手で口を押さえてせきやくしゃみをすると、ウイルスを含んだ鼻水やたんが付着する。水で洗い流せない場合は、消毒薬を30秒以上手に擦り込む必要がある」と話している。
感染症専門医の宮下修行・関西医科大診療教授の話「アルコール消毒があまり効かない微生物も多い。手や指の消毒の基本は手洗いであることを忘れてはいけない」