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自治体に働きかけ、病院嫌いな人もフレイル外来に呼び込む‐佐々尾航・道立羽幌病院副院長に聞く

――フレイル外来開設するにあたって、まず始めたことは何でしたか。
 自治体の協力が不可欠だと思いました。本来であれば、自治体などがフレイルの状態の人を発見して、医療機関と連携をすることが望ましいでしょう。なぜならば、病院にかかっている人の把握は病院ができますが、かかっていない人もいるため、そうした人が取りこぼされる可能性があるからです。

 だからまず、自治体の協力を仰げるように、近隣の自治体に現状や開設の目的を説明しに行きました。現在は、当院が主体となって羽幌町、苫前町、遠別町、初山別村と連携しながらフレイル外来を行っています。

 病気は、転倒して大腿骨骨折して寝たきりになって・・・と、階段上に悪くなっていくと思われがちですが、転倒するまでには、年齢とともに衰えている箇所があるなど、何かきっかけがあるわけです。そこで、転ばないようにするためには地域で何ができるかを考えて、介入することが必要だと思います。

――フレイル外来ではどのようなことを診るのでしょうか。
 フレイルには3つの要素があります。運動機能や筋肉量や口の機能の低下などの「身体的なもの」、閉じこもりや社会参加の欠如などの「社会的なもの」、うつ傾向や認知機能の低下など「精神的なもの」です。ですからそれらが総合評価できるようなものにしています。

 まず、道立羽幌病院では、要介護状態ではない方で、「体重減少、歩行速度低下、握力の低下、疲れやすい、活動性の低下」の5つのうち、1つ以上あてはまる方を外来受診の対象にしています。これは自己申告制で、これらに「自分はあてはまるかも」と思われた方は、お住まいの自治体の地域包括支援センター、または当院に申し込みをしてもらいます。要支援や要介護1までの方で、主治医が評価を希望される方も自院・近隣の他院を含めて受け入れています。

――フレイル外来の流れについて教えてください。
 外来受診の対象になった人には、問診票を記入してもらいます。問診票のチェックは、看護師や理学療法士など多職種で担当をしています。

 そのほか、身体の各パーツの筋肉量が計測できる身体測定や、ロコモ度テストを中心に運動機能を測定し、それぞれ評価をします。また、受診状況や内服薬の確認もここで行います。予防の対象ですので、ここまでの費用は無料で行われます。

 以降は保険診療で行われます。まず、1回目の医師の診察では、認知機能に関する問診と、事前に行われた身体測定や運動機能の結果および問診から得られた結果の説明をします。また、ポリファーマシー(多剤内服)は転倒のリスクがあるため、この点についても確認しています。薬剤数が多い方の場合は、その内服理由などを伺い、減薬の必要があれば時間をかけて説明しています。

 次に、それらを受けて検査や必要な指導を行います。検査は、血液検査を実施し、運動機能の低下があれば骨密度の検査、認知機能の低下があれば頭部MRIなどを実施します。指導には、低栄養やその危険があると考えられる場合は、栄養指導を行い、中等度以上の運動機能低下や軽度でも転倒リスクがある場合はロコトレ指導があります。

 その後、医師の2回目の診察を受け、初診後の検査結果の説明や、異常が認められた場合の治療方針の説明、今後の生活に関する指導をする流れになります。また、自治体にはこの結果を返し、介護予防に活かす、あるいは早期介入してもらえるようにしています。

――開設してからちょうど1年が経過しますが、結果など状況はいかがですか。
 開設当初は予約が取れないほど人気でしたが、現在は比較的落ち着きました。外来診察を受けた人数は、2018年度は23人、2019年度は9人(11月現在)で、合計32人です。

 2018年度分では23名中16名(70%)が、中等度以上運動機能が落ちていることがわかりました。骨密度検査で骨粗しょう症がわかった人は、新たに判明した方が4人、他院加療中だがさらに低下していることが判明した方が1人、認知症検査で軽度認知機能障害(MCI)が12人、認知症が2人でした。ポリファーマシーの方は14人(60%)でした。

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