新型コロナウイルスのワクチン接種後の熱や痛みといった副反応に対処するため解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンに注目が集まるなか、65歳以上に対する医療用のアセトアミノフェンが2021年5月に、直近5年の同月と比較して最も多く処方されていたことがわかった。
これは調剤レセプトで実際の処方動向を把握・分析する医療情報総合研究所(通称:JMIRI、読み:ジェイミリ)のデータによるもの。ワクチン接種による副反応を背景としたアセトアミノフェンの処方かどうかまでは不明だが、過去4年の5月と比較して21年の処方患者数は突出して多いことから、JMIRIは「コロナワクチンの接種による発熱や痛みを抑えるために処方された可能性が高い」と分析している。
同社のデータによると、5月のアセトアミノフェンの処方患者数(65歳以上)は、21年は3万9418人、20年は2万7730人、19年は3万2305人、18年は2万8547人、17年は2万5548人――だった。
なお、例年8~9月に流行するRSウイルス感染症が今年は5月に急増した。ただ、過去の8~9月にアセトアミノフェンの処方患者数は大きく伸びていない。このためJMIRIは、今年5月のアセトアミノフェンの処方患者数の増加にRSウイルス感染症はあまり影響していないとみている。
◎アセトアミノフェン 自費処方が急増
5月に保険外(自費)で医療用のアセトアミノフェンを処方してもらった患者数は前年同月比で88%の大幅増となったこともわかった。ロキソプロフェンの自費での処方は例年とほとんど変化はなく、アセトアミノフェンだけ急増していた。ワクチン接種による副反応発生前の予防投与とみられる。
アセトアミノフェン及びロキソプロフェンの自費での処方は、全体の1%弱と稀なケースであることに留意が必要だが、ドラッグストアでアセトアミノフェンを買い求める人が急増しており、医療用のアセトアミノフェンの処方動向もしばらく注視する必要がありそうだ。