岡山大大学院医歯薬学総合研究科の窪木拓男教授=インプラント再生補綴(ほてつ)学=らのグループは、専門とする歯科インプラント治療と、その土台となる顎の骨を再生させる治療の臨床試験(治験)を進めている。独自に改良した人工骨を活用。交通事故などで顎骨を失ったり、先天的に骨が少なかったりする患者の治療の選択肢を広げるとともに、QOL(生活の質)向上につなげる。
インプラント治療に向けた顎骨の再生は歯肉を切開し、既製の小さな粒状の人工骨を入れて行うが、再生能力に限界があり、骨の欠損の度合いが低い場合にしか使えない。大きく欠損している場合、患者自らの腰骨などを移植する必要がある。
大きく欠損した患者の再生治療に向け、窪木教授らは既存の人工骨に、骨を形成する特殊なタンパク質の水溶液を染みこませた人工骨を2006年から開発。強い再生能力を持つことなどを確認した。
治験は患者8人で実施。新たな人工骨を欠損した顎骨付近に入れて再生を促す。骨の欠損が比較的小さい患者には人工骨と同時に、重症患者はおよそ半年後にインプラントを埋め込む。9カ月後と11カ月後に効果を検証する。
23年5月までに終了させ、安全性や治療効果などが確認できれば、臨床応用に向けた最後の治験の準備に移る。窪木教授は「骨の移植は大きな手術となる。身体的、経済的な負担を軽減する新たな治療法を、できるだけ早期に確立させたい」と話している。