飛騨市民病院(岐阜県飛騨市神岡町)の第一診療部長兼内科部長の工藤浩医師(48)による、嚥下(えんげ)機能障害がある患者の診療での完全側臥位(そくがい)法の有用性を示す論文が、日本内科学会発行の英文誌「Internal Medicine」に掲載された。市民病院は医師らの研究などから誤嚥(ごえん)予防に完全側臥位法を取り入れ、診療を進めている。
完全側臥位法は、横向きに寝ながら食物を口から摂取する方法で、誤嚥を予防する技法とされる。2012年に日本人医師によって論文が発表された。
肺炎による死亡者数の増加は嚥下機能の低下による誤嚥性肺炎の増加が主な要因と推測されることなどから、市民病院では、誤嚥を予防する嚥下補助技法の完全側臥位法を研究。工藤医師をリーダーに看護師や管理栄養士ら15人で栄養サポートチームをつくり、15年から診療で完全側臥位法を行っている。
論文では、15~17年に市民病院で嚥下機能障害と診断され、完全側臥位法で治療された患者の103人と、完全側臥位法とは異なる方法で同病院で治療された嚥下機能障害の患者を比較。完全側臥位法による患者は誤嚥性肺炎による死亡率が低くなり、栄養状態も改善され、亡くなるまでの平均欠食期間が短縮されたことなどを記した。安全な食事の摂取が、リハビリによる機能強化にもつながるという。英文誌の掲載は11月15日付。
工藤医師は「完全側臥位法は特別な技術や道具はいらず、誰でもできる技法。人生の最期に近づく頃まで食べたいものを口から食べてもらいたい。英文の論文により、技法の有用性を広く伝えることができる」と話した。