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地域医療に関わる医師のモチベーションにも、「やぶ医者大賞」

2023年に第10回を迎えた、地域医療で活躍する医師を表彰する「やぶ医者大賞」。ユニークな賞の名前からも、毎年注目を集めている。主催する兵庫県養父市の健康福祉部健康医療課長の余根田一明氏に賞創設の背景や、養父市の地域医療の取り組みについて伺った(2023年11月11日にインタビュー)。

――やぶ医者大賞は2023年で10回目となります。開始のきかっけを教えてください。

 養父市の中核病院は、公立八鹿病院です。2014年、公立八鹿病院の医師が不足してきたこともあり、地域医療にスポットを当て、何かできないかということになりました。養父市は4つの町が合併してできていて、そのうちの一つが旧養父町です。養父町時代から、町は諸説ある「やぶ医者」の語源の一つが町であることを広報誌に掲載するなどしてきました。

 「養父にいた名医が『やぶ医者』と呼ばれており、もともと名医を表す言葉だった。しかし、やぶ医者の弟子だと自称する口先だけの医師が続出し、現在の下手な医師を表す言葉になった」という説です。この説を、地域医療に関心を持ってもらうきっかけにしたいというアイデアがきっかけになってできたのが、「やぶ医者大賞」です。多くの人に「腕の悪い医師」のことと認識されている言葉を逆手に取った取り組みで、町の知名度を上げたいという思いもあったようです。地域医療自体に注目してもらうことで、関わる医師のモチベーションになる面もあると思います。

――市の知名度を上げ、医師を増やしたいということだったのですね。

 八鹿病院は二次救急から在宅医療まで幅広く地域の医療を担う病院です。平成初期から訪問看護も行っていて、病院と地域の医師、看護師の連携を進めてきました。その中心である八鹿病院の医師が、2005年に54人だったところ、2020年には44人と、減少傾向にあります。市全体として、地域医療を担う医師を集めることに力を入れています。

――やぶ医者大賞は、ノミネートされるのも大変という声も聞きました。選考の流れを教えていただけますか。

 ノミネートされるには推薦が必要です。自治体、医師会、大学などから推薦を受けた、地域医療に貢献する医師が選考の対象になります。自薦だけでは応募できない点ではハードルがあります。医療過疎地域の病院、または診療所に5年以上勤務する若手医師を対象にしています。

 選考では、地域医療への情熱、関係機関との連携、地域住民へのアプローチの方法、などがキーワードになります。医師の人柄も重要なのではないかと思います。

――やぶ医者大賞開始から10年、実際に知名度が上がってきたと感じるような出来事や、変化はありましたか。

 養父市民の関心は高く、受賞した先生について「こんな先生が養父市にいたらいいな」とよく言われます。選考の過程では、養父市よりもさらにへき地、過酷な環境で医療を行う先生の工夫等を知ることができます。このこと自体が、養父市の地域医療を持続させていくための参考になっています。授賞式には養父市の医療関係者も参加しますので、日本各地で地域医療に取り組む先生の活動を共有できることは意義があります。

 10回目となることを機に、これまで大賞を受賞した20人の先生方とネットワークを作り、これからの地域医療について情報を連携する取り組みも始めます。養父市だけではなくたくさんの地域にとって、心強い味方がいるような状態です。ノウハウを共有し、全体での底上げにつながると思います。

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