粉薬が苦手
東京都の会社員女性(40)は、4歳の長男に粉薬を飲ませるのにいつも苦労している。「苦いと言って薬をはき出そうとする。飲まなければ良くならないのに」と悩む。
子どもに出される薬は主に粉薬やシロップだが、粉薬が苦手なことも多い。乳児の頃は比較的飲ませやすくても、1、2歳以降の幼児になると、薬の苦みや口あたり、後味などを嫌って拒否するようになる。
水だけで粉薬を飲むのが望ましいが、どうしても難しい場合、食品に混ぜて服薬させる方法がある。
国立成育医療研究センター薬剤部の笠原沙耶香さんによると、抗菌薬や漢方薬はココアやプリン、アイスクリーム、練乳のような味の濃い食品に混ぜると、薬の苦みや酸味、においを覆ってくれるという。
組み合わせ注意
ただ、食品の組み合わせによって、苦みが増して飲みにくくなったり、薬の効果が弱まったりするので注意が必要だ。オレンジジュースやスポーツ飲料といった酸性の飲み物は、抗菌薬やドライシロップを混ぜると、薬のコーティングが剥がれて苦みが出ることがある。どんな組み合わせが望ましいのか、医師や薬剤師に相談するとよい。同センターでは粉薬と食品の組み合わせに関する情報をホームページで紹介している。
ゼリーや、薬を薄い膜で包んで飲むオブラートといった服薬補助食品を使ってもよい。クラシエから昨年発売された「おくすりパクッとねるねる」は、同社の知育菓子から生まれた服薬補助食品だ。少量の水と粉と薬(粉薬や顆粒剤)を混ぜ、泡状にして服用するので苦みが軽減される。現場の薬剤師が子どもに薬を飲ませる際、この菓子を使っていたことが開発のきっかけといい、同センターも共同研究に参加した。補助食品はドラッグストアなどで扱っている。
錠剤が飲めるようになる年齢には個人差があるが、5歳頃から処方される。小児薬物療法認定薬剤師で子どもの服薬に関する著書もある松本康弘さんは、「粉薬は体重の増加によって粉の量が増えるので飲むのが大変な場合もある。錠剤の方が楽ということもある」と話す。
錠剤が苦手な場合は、口の中を湿らせてから、舌の奥に錠剤を置き、すぐに水を飲ませる。錠剤によっては割線があって割って飲める場合もあるが、砕いたりしてはいけないものもあるので確認しよう。粉薬に戻せる場合もあるので医師や薬剤師に相談する。
「大人飲み」も
松本さんは、親が薬を飲む理由を説明して子どもが理解できる4、5歳頃になったら、子どもの自尊心をくすぐる「大人飲み」をすすめる。自分の子どもと同年代の子が薬を飲んでいる写真を見せて同じように飲んでみることを促す。自分と同じぐらいの年齢の子が、大人と同じように口に含んだ薬を水で飲んでいるのを見ると、刺激されて、「自分もやってみよう」という気持ちになる子どもが多いという。
薬を飲むタイミングについて、効果を出すために食後に飲むよう指導されることが多いが、食後だとおなかがいっぱいで飲みづらい場合がある。子どもの薬の多くは食前に飲んでも問題ない。松本さんは、「時間をおいて挑戦してもいいし、全部飲めなくても1回分の8割程度でも大丈夫。薬によっては苦みの少ないものなどに変更できる。保護者が神経質にならないようにしましょう」と話す。