世界で電気自動車が普及し、EV化が加速する中、長い航続距離・高い安全性を実現し、低コストで生産可能な電池開発が大きな進歩を遂げています。その中心が次世代の電池と目されている「全固体電池」です。一般的に使われている電池に様々な種類があります。リモコンや置き時計、懐中電灯などでよく使われているのはアルカリ乾電池で、スマホやタブレット、ノートパソコンなどをはじめとする電子機器類及び電気自動車のバッテリーなどには、小さくて大容量のリチウムイオン電池が広く使用されています。ただし、リチウムイオン電池は、正極と負極の間でイオンを伝達させる電解質に液体の有機溶剤を使用しているため、液漏れによるショートによる発火や破裂などのリスクがあります。その点、全固体電池は電解質が固体のため高温に強く、発熱量も小さいため、スマホの突然発火などのリスクが低減され、リチウムイオン電池より安全であるとされています。さらに劣化しにくいのが特徴で、携帯であれば充電が長持ちし、電気自動車に搭載すれば、航続距離を伸ばすことや充電時間を短縮することも可能となります。他にも全固体電池はリチウムイオン電池と比べて大容量で、作動温度範囲が広く高温や低温でも問題が生じないことも大きなメリットです。しかし、低コストで生産するための技術という点においては、安定した製品化・量産化への課題も残されています。
日本政府は2050年のカーボンニュートラルを実現すべく、経済産業省のグリーンイノベーション基金事業を通じて、グリーン成長戦略の重点14分野を支援していますが、そこには自動車・蓄電池産業も含まれおり、全固体電池も研究開発も支援の対象となっています。電池に関する特許出願数を見ると、日本は世界でもトップクラス。全固体電池の量産技術を確立した企業は、世界のEV市場の覇権を握るとされています。すでに日産自動車では、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」において、2028年度までに自社開発の全固体電池を搭載したEVの市場投入を目指すことを発表しています。EV普及の起爆剤、カーボンニュートラル実現のゲームチェンジャーとなる可能性を秘める全固体電池。日本政府の今後の後押しと技術革新にぜひ注目したいと思います。