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軟骨細胞の破裂が骨形成の場を作る。骨が出来る新たなメカニズムを発見。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科生体材料学分野の松本卓也教授と原エミリオ助教と大阪大学の研究グループは、骨が形成される新しいメカニズムをマウスモデルを使って発見したと発表した。研究グループは、二次骨化中心と呼ばれる大腿骨などなどの関節部分に注目。このあまり検討されてこなかった部位や時期を分子生物学的、形態学的さらに工学的といった複数のアプローチで検討。
その結果、大腿骨骨頭部分のほとんどを占める軟骨細胞が次第に肥大化し、細胞の一部が破裂し骨形成に必要なスペースが出来ること、破裂の際に残された細胞膜の断片が骨石灰化の開始点になることがわかったという。また、この細胞破裂は歩行などによって生じる機械的刺激によって誘引されることも判明した。この研究結果により、適度な運動で生じる関節部分の細胞破裂が正常な骨形成に関与していることが明らかになった。細胞膜断片が骨石灰化の起点であることを特定したことで、細胞膜断片を利用した新たな骨再生材料の開発などに繋がるだろう。

舌ピアスは歯周病を悪化させる?

舌ピアスはセクシーでクールなファッションアイテムとして一部の若者に人気だが、口腔内の健康状態に極めて悪い影響を与えることが、バーゼル大学(スイス)のClemens Walter氏らによる研究から明らかになった。この研究では、舌ピアスを付けると歯周病のリスクが高まることが示唆された。一方で、リップピアス(唇のピアス)ではこうしたリスクの上昇はみられなかったという。この研究結果は欧州歯周病学会(EuroPerio9、6月20~23日、オランダ・アムステルダム)で発表された。

 Walter氏らは今回、同大学の歯科医療センターで治療を受けた1,400人以上の患者のうち、舌ピアスまたはリップピアスのいずれか、あるいは両方を付けている患者18人(このうち14人が女性)を対象に、ピアスによる歯や歯茎の健康状態への影響について後ろ向きに検討した。対象者の平均年齢は28.3歳で、3人は舌ピアスとリップピアスの両方を付けており、計14カ所の舌ピアスと計7カ所のリップピアスで評価した。

 その結果、舌ピアスを付けていると、ピアスに近接する歯の歯茎ほど歯周病検査(プロービング)時の出血の頻度や付着の喪失(アタッチメントロス)の有無、歯周ポケットの深さといった歯周病の評価指標が悪化していることが分かった。一方で、リップピアスではこうしたピアスによる悪影響は認められなかったという。

 このほか、同学会ではブリュッセル(ベルギー)の歯科医であるBernard Loir氏が、舌ピアスが原因で歯が正常な位置からずれてしまった27歳と32歳の2人の女性患者について報告した。女性は2人とも口の中のピアスが歯に当たって、長年にわたり歯茎の出血や感染などのトラブルに悩まされていた。最終的に歯茎が腫れて歯がぐらつくようになり、位置もずれてしまったため、舌ピアスを付けてから8~10年後にピアスを外さざるを得なくなった。Loir氏によると、2人とも外科治療や抗菌薬投与を受けたが、失われた組織を元通りに再建することはできなかったという。

 WalterとLoir両氏によれば、舌ピアスがあると飲んだり食べたりするときに邪魔になり、話しづらくなるほか、舌ピアスが気になって噛んだり、歯や歯茎に押し付けたりしていると口腔内の炎症や損傷につながりやすいという。

 米国歯科医師会のスポークスパーソンであるTyrone Rodriguez氏は「舌ピアスを付けることは、口の中に小さな建物解体用の鉄球があるようなものだ」と表現する。固いピアスが歯に当たってできた微小なひびは、最終的には大きなひび割れになって歯が欠けたり、割れたりする。また、口腔内にある500種類以上の常在菌は、傷口や病変ができると日和見感染を起こしやすく、感染症リスクを上昇させるという。

 Walter氏によると、口腔内の健康状態が気になる人は、できるだけ早く舌ピアスを外すこと以外に対策はないという。どうしても外したくないという人は、取り外しできるピアスを使用して常に清潔に保つことが重要だと助言している。なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

「かむ力」が認知機能と関連、入れ歯でもOK 阪大など

高齢者の認知機能は、「残っている歯の数」よりも「かみ合わせる力」と強く関連していたという研究結果を、大阪大などのグループがまとめた。かむ力が強い方が脳への刺激になり、認知機能に関わるとされるビタミン類などの栄養の摂取にもつながっている可能性がある、としている。

 兵庫県と東京都に住む約2千人(69~81歳)に対し、2010~11年、残っている歯の本数や、専用のフィルムで「かむ力」を調べ、普段の食事内容などを聞き取った。また、記憶力などを問う認知機能のテストを受けてもらい、関連を調べた。その結果、かむ力が強かったり、緑黄色野菜を食べたりしている人ほど、テストの成績がよい傾向にあった。

 これに比べると、歯の本数と成績に、強い関連はみられなかった。入れ歯によって、かむ力を補っていた可能性があるという。大阪大の池辺一典 教授(高齢者歯科学)は「認知機能を保つうえで、歯を残すことも大切だが、入れ歯などでそしゃく機能を維持することが、それ以上に重要だ」と指摘している。


(朝日新聞 DIGITAL 6月2日より)

ドライマウス 最新治療&チェック法

鶴見大学歯学部の斎藤一郎教授の解説。ドライマウスの原因は降圧剤など薬の副作用、口呼吸、シェーグレン症候群など。さきほどの岡野さんはストレスが大きな原因と診断され、「横断歩道の白線だけを歩く」「オカリナの演奏」を半年間行い症状が回復した。意識を集中することで痛みや症状への意識が外れるのが目的。オカリナ以外にも自分が没頭できるものを探すと良い。乾きを忘れるような何かに没頭することがストレスによる症状の悪化を防ぐと考えられる。ドライマウスセルフチェック表。「口の乾きが3か月以上続く・口内炎がよくできる・口臭が常に気になる・虫歯になりやすい・目や鼻の中が乾燥する」が3か月以上続く人はドライマウスの可能性あり。シェーグレン症候群の方は医師と相談の上で唾液分泌促進薬による治療も行われている。ドライマウス研究会のホームページでは全国の歯科・口腔外科・耳鼻咽喉科を紹介している。ストレスによる口の乾きは悪循環になることがあり乾きのストレスをためないことが重要。

長引く口の乾き 原因解明のカギは「脳」

東京医科歯科大学の豊福明さんは口ではなく脳に変化が起きているのではないかと患者の脳の血流量を調べた。ドライマウス患者35人のほぼ全てで血流量の多い部分が右側に偏っていた。脳神経の専門家で日本大学の酒谷薫さんを訪ねた。脳にストレスをかけ血流の変化を見る実験。タイプ1は血流が左に偏り、タイプ2は血流が右に偏っていた。血流が左に偏る人は計算テストを行っている間、1分間の心拍数が平均4回増加し、血流が右に偏る人は平均14回増加していた。右優位の人はストレスに敏感に反応するストレス脳でドライマウスになったと考えられる。ストレスの長期化などでストレス脳に変化すると唾液減少もストレスに感じるようになり、もともとのストレスがなくなっても唾液の量が戻らないと考えられる。鶴見大学歯学部の斎藤一郎教授の解説。ドライマウスの症状が継続的に続いてしまう理由が精神的・神経的なものが関わっていることが明らかになってきた。脳がストレスに敏感になっている人は口の乾き自体が原因で症状を悪化させることがある。

ストレスをためない!簡単お口うるおし術

 ドライマウスの患者は推定800万人。最近はジェルタイプで指で口の中に塗る保湿剤も登場。スプレータイプもあり売り上げは増加中。医師もおすすめする口の乾き対処法「リップトレーニング」は前歯が見えるように口の筋肉に力を入れ「イー」。唇を前に突きだし口の筋肉を緩めて「ウー」。口の乾きを感じた時に10回程度繰り返す。ストレスを軽減させる効果も期待できる。世界が注目する簡単治療法はこのあとすぐ。はしのさんは「牛の唾液の育毛が衝撃的だった」と話した。

あなどれない口の乾き 思わぬ症状が次々と…

 さきほどの実験の9分後には唾液の量は回復した。ところがストレスの原因が取り除かれたあとも唾液の量が戻らない人が推定800万人いる。唾液の機能がアップしても口全体に行き渡らないと大問題。「ドライマウス(口腔乾燥症)」という唾液の減少。渡辺花菜絵さんは就職活動を始めた1年程前から口が乾燥し働き始めた現在も症状が続いている。外出する時は口を潤すものが手放せない。

 岡野富美子さんはドライマウスの症状で食事の味を感じなくなった。さらに口内炎ができやすくなった。3年前にドライマウスを発症した佐藤よし子さんは飲み込みづらさや口臭を感じるようになり、家にこもりがちになってしまった。ドライマウスで起きる症状は強烈な口の乾き、常に口内炎、強い口臭、増える虫歯、味がわからない、様々な感染症、誤えん、肺炎。唾液の量が戻る人と戻らない人は何が違うのか?

口から食べることの大切さ

私たちにとって「口から食べる」ということは、生活を楽しむ上で欠かせないことです。あるアンケート調査で、特別養護老人ホームや老人保健施設などの利用者に「現在の楽しみは何?」と尋ねたところ、一番多かったのは「食事」と答えた人です。

 口にはたくさんの機能がありますが、食べるときに重要なのは歯、舌、唾液の機能です。歯は食べものを細かくかみ砕き、すり潰して消化を助ける役割があります。これを咀嚼(そしゃく)といって、脳や神経系を刺激して活性化させます。次に舌は味を感じるだけでなく、口にしたものが体にとって危険であるかないかを識別します。また、咀嚼したものを舌と上あごで押し潰し、唾液と混ぜ合わせて飲み込む塊をつくって喉へと流し込みます。

 口の中には約300~700種類、数千億の細菌がいるといわれていますが、唾液には食べものの消化を助ける働きと、口の中を殺菌するという重要な役割があります。唾液の中には免疫系に関わるものが多く含まれているので、唾液が減って口の中が乾燥すると口の中に入ってきた病原菌などを殺菌できなくなり、細菌の住み家になってしまいます。食べたり話したりすることで唾液も出て、飲み込むと細菌も同時に胃や腸で消化されて、病原菌も処理されます。

 口から食べることは、食べものを咀嚼したり飲み込んだり、味を感じることで脳や神経系を刺激して活性化させ、全身の免疫力や抵抗力を高めることにつながります。口の機能が低下すると生活の質(QOL)も低下してしまうので、口から食べて、その機能を最大限に使い、QOLの維持と向上を目指しましょう。

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