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歯の喪失がアルツハイマー病の原因であるタンパク質に影響を与えることが明らかに

代表的な認知症であるアルツハイマー病の原因の一つとして、タウというタンパク質の塊が脳内に蓄積することが知られている。また、高齢者では歯がどのくらい残っているかなど、口腔内の環境が認知症と関わりがあることも示されているが、その詳細は不明だった。

 東京歯科大らの研究チームは、歯が抜けて根元の神経が損傷されると、脳の深部の脳幹という所にある神経のおおもとが死んでしまうことに着目した。その理由は、加齢に伴って脳幹からタウ(タンパク質)の塊が蓄積し始めることだった。陽電子放出断層撮影法(PET)という画像検査により、アルツハイマー病患者のタウ蓄積を調べたところ、残っている歯の本数が少ない人ほど脳幹のタウ蓄積が多いことが判明した。さらに脳幹のタウ蓄積が多い人ほど、記憶の出し入れに関わる海馬という脳領域のタウ蓄積も多いことが明らかになり、歯を失うことがアルツハイマー病のタウ蓄積を加速して、発症や進行に関わる可能性が示さた。

 研究の結論として、口腔内をケアして歯の喪失を防ぐことは、アルツハイマー病の発症や進行を食い止めることにつながる証拠を、病態の観点から得ることができた。 本成果は2023年11月21日付で、ジャーナル誌『Journal of Alzheimer’s Disease』に研究論文として掲載された。
【歯科通信】

歯周病検診が年1回無料 全身の病気リスクに影響、岐阜・美濃加茂市が県内初実施

岐阜県美濃加茂市は4月から、18歳から74歳までの市民を対象に、希望者が年1回の歯周病検診を無料で受けられる「市民皆歯科健診」を県内で初めて開始した。全国でも珍しい取り組みで、市は告知ポスターを作成、加茂歯科医師会に加盟する歯科医院に掲示して取り組みの広がりを期待する。

 全身の病気リスクに影響する歯周病の患者が若年層でも増えていることを受け、市では2020年度から、歯周病検診を20歳から70歳まで5歳刻みの年齢を対象に無償化する独自の取り組みを行っており今回さらに充実させた。

 法定健診は1歳6カ月と3歳、保育所や認定子ども園に通う幼児(4~6歳)、小中高校に登校する児童生徒(7~17歳)を対象に年1回無償で実施する。市独自で実施する「2歳児歯みがき教室」で歯科健診も行っていることから、未就園児や不登校の児童生徒を除き、1歳6カ月から74歳までの間、希望者は年1回の歯科健診を無料で受ける体制を整えた。

 切れ目のない歯科健診体制を整えて早期治療を促し、健康寿命延伸につなげるのが狙い。18歳から74歳までの市民は約3万9800人で、市は本年度1004万円の予算を組んだ。

 市によると、歯周病検診の受診率は、2020年度に前年比2・72ポイント増の6・69%で、ここ数年約6%台を維持する。河村二郎会長は「歯を治療する時代から予防する時代に変化してきた。早期発見・早期治療で重症化を予防し、健康寿命の延伸につなげるため、受診率アップを目指したい」と話した。

マクロライド系抗菌薬が骨の再生・回復に寄与。歯周病や骨粗鬆症の治療薬開発促進に期待。  

新潟大学と北里大学は、米国ペンシルバニア大学、独ドレスデン工科大学との国際共同研究を実施し、マクロライド系抗菌薬と同薬から合成した非抗菌性誘導体EM-523が、骨の再生・回復に働くことを、老齢動物モデル実験で明らかにした。
 研究の結果、マクロライド系抗菌薬および誘導薬EM-523は、骨再生に重要DEL-1を誘導することが判明。さらに、これら薬剤の長期投与により、老化マウスで歯槽骨と長管骨の再生促進が認められ、老化による骨粗鬆症を改善させることが明らかになった。

だ液によるがんリスク検査サリバチェッカーが第18回ニッポン新事業創出大賞特別賞を受賞。

サリバチェッカーは、だ液中の代謝物の濃度を高精度に分析し、がんの異常値を示す物質の濃度をAIなどで解析することで、現在のがん罹患リスクを評価するというもの。だ液を採取し、同社に送るだけで検査が可能なため、患者に負担をかけることなく複数のがんリスクをチェックすることが可能だ。 
 セルフメディケーションの重要性が叫ばれる中、定期的な診療に併せて提案が出来ると、導入医療機関は1800を超えている。

歯科衛生士は14万5,183人で2,423人増加。歯科技工士は3万2,942人で1,884人減少。

厚生労働省が公表した「衛生行政報告例の概況」によると、2022年末時点の就業歯科衛生士数は14万5183人で、前回調査の2020年末時点よりも2423人増加した。就業場所別では、診療所が最も多い13万806人、診療所以外は1万4337人。
 一方、2022年末時点で就業歯科技工士は3万2942人となり、前回調査から1664人減少。年齢別にみても、65歳以上が16.9%を占めており、若者の歯科技工士離れを物語る結果となっている。

ミュータンス菌による肺の血栓形成が、がんの転移を促進することを解明。

北海道大学大学院歯学研究院の樋田京子教授、ユ・リ博士研究員と藤田医科大学の研究グループは、ミュータンス菌により肺の血栓形成が誘導され、がん転移を促進することを見出した。研究では、ミュータンス菌の刺激による血管内皮皮細胞の炎症性変化と、血小板活性化や凝集、好中球の遊走への影響、血栓関連遺伝子の発現レベルを解析。
 その結果、ミュータンス菌の刺激により血管内皮細胞による血小板の活性化、好中球の遊走を促進することが示された。さらに、ミュータンス菌をマウスの毛中に循環させると、肺における血栓形成が誘発され、がん転移が増加した。

由仁の歯科医院から出火、1人死亡

【由仁】7日午前4時40分ごろ、空知管内由仁町東栄の歯科医院から出火、木造平屋の建物内部を焼き、焼け跡から性別不明の遺体が見つかった。

歯周病 甘く見ないで 糖尿病悪化、動脈硬化リスク増も...「半年に一度 検診を」

 歯を失う二大原因の一つの歯周病。軽度だと痛みがなく、知らず知らずに進行している人も多い。口の中の健康だけでなく、進行すると全身にさまざまな影響を及ぼすことも。歯科医師で福井県歯科医師会広報部の前川雄紀さんは「たかが歯周病と思わず、しっかり治療や予防をしてほしい」と話す。4月4日は歯周病予防デー。

 歯周病は細菌の塊の歯垢(しこう)(プラーク)が原因。歯と歯茎の間の溝に歯垢がたまると、歯垢に存在する歯周病菌が毒素を出し、歯茎に炎症を起こして溝が深くなっていく。こうしてできた「歯周ポケット」は歯垢がたまりやすく、炎症がひどくなって溝がより深くなっていく。進行すると歯槽骨(歯を支えるあごの骨の一部)が溶け、歯が抜けることもある。痛みがある場合は中程度まで進行しているケースが多い。厚生労働省の調査によると、30代以上の3人に2人で歯茎に何らかの違和感があり、45歳以上では半数に歯周病の症状があるという。また、10代後半から20代で発症し、数年で一気に進行する侵襲性歯周炎もある。喫煙者は、歯茎が出血しにくかったり、腫れにくかったりするため歯周病に気付きにくく、症状も悪化しやすいという。

 治療は、歯垢や、歯垢が石灰化して硬くなった歯石を取り除くことがメイン。精密検査後、基本治療として歯の表面や歯周ポケットにある歯石を除去し、歯垢のない口腔(こうくう)環境にするため歯みがき指導を行う。基本治療で改善しなかったり、歯周ポケットが深くて歯石を除去できなかったりした場合は、歯茎を切開して歯石を取り除く外科手術を行う。また、特殊な薬剤で欠損した骨を再生することもある。症状が改善すれば定期的なメンテナンスに移る。

 歯周病は他の疾患との関係も深い。歯周病菌は血糖値をコントロールするインスリンの働きを悪くし、糖尿病を悪化させる。ほかにも動脈硬化のリスクが2~3倍、妊婦は低体重児や早産のリスクが7~8倍高まるといわれる。妊娠中は女性ホルモンの関係で歯周病になりやすくなるので注意しなければならない。アルツハイマー病の原因物質のアミロイドベータがたまりやすくなるという研究データもあるという。

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