記事一覧

給食窒息事故で請求棄却 宇都宮地裁「予見できず」

栃木県真岡市の市立小で2010年、当時1年だった飯沼晃太(いいぬま・こうた)君が給食の白玉団子を喉に詰まらせ、その後死亡したのは市が安全管理を怠ったことなどが原因として、両親が市に約8400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、宇都宮地裁は2日、「誤嚥(ごえん)する危険性は予見できなかった」として請求を棄却した。

 訴訟で両親側は、文部科学省がパンの誤嚥死亡事故などを受け、08年10月の時点で給食での窒息について注意喚起しており、市には予見可能性があったと指摘。市側は、給食で提供された白玉を原因とする窒息事故は県内で報告されていなかったとし、救護措置も適切だったとしていた。

 吉田尚弘(よしだ・なおひろ)裁判長は判決理由で「当時7歳の健康な児童に対し、直径約2センチの白玉団子がほかの食品と比べて誤嚥する危険性が高いというのは困難で、半分ないし3分の1にして提供する義務があったとはいえない」と指摘。

 救護措置については「速やかに救急通報しており、救命するため行うべき処置をした」とした。

 判決によると、飯沼君は10年2月10日、白玉汁に入った白玉団子を喉に詰まらせた。病院で脳死宣告され、13年1月、10歳で死亡した。

 父親の健一(けんいち)さん(37)は判決後の記者会見で「このままでは何も変わらず、晃太の死が無駄になる。行政が変わらなければ、また事故が起きる」と話し、控訴する意向を示した。

 真岡市の井田隆一(いだ・りゅういち)市長は「今後も再発防止に取り組む」とのコメントを出した。

関連記事
白玉団子で窒息、両親の請求棄却 宇都宮地裁
朝日新聞
誤嚥死亡で和解金600万、神戸地裁での双方の主張を詳報
高橋直純(m3.com編集部)
男性医師の勾留中死亡、奈良地裁、遺族の請求棄却
橋本佳子(m3.com編集長)
部活事故で元顧問賠償責任 高校生死亡に「重過失」
共同通信社
抜管時過失で1億2000万賠償、神戸地裁判決を詳報
高橋直純(m3.com編集部)
おすすめ臨床

歯周病 治療に新薬 歯支える骨、増やす 患者の選択肢、広がる

成人の8割がかかっているとも言われる歯周病は、悪化すると歯を支える骨「歯槽骨」が壊され、歯が抜けてしまう恐れもある。対策は口の中をケアし、悪化を防ぐしかないと思われてきたが、昨年12月、歯槽骨を増やす効果のある新薬「リグロス」(一般名トラフェルミン)が発売された。現時点では効果は限定的だが、患者にとっては選択肢が広がりそうだ。【野田武】

 大阪府吹田市の主婦(30)は3年前、歯がぐらついて食事がしにくくなり、近所の歯科医院を受診した。専門的な治療が必要と判断され、大阪大歯学部付属病院(同市)を紹介された。

 主治医はリグロス臨床試験(治験)について説明した。「症状がよくなる可能性があるなら」と考えて参加した。「手術後も痛みなどはなく、歯は今も大丈夫です」。女性は歯を失わずに済み、術後も順調だという。

 歯周病の原因は口の中の細菌の塊(プラーク)。これを放置すると歯周病になり、プラークが歯石になると歯磨きでは取れなくなる。さらに悪化すると歯槽骨などの組織を壊してしまう。

 歯科医にプラークと歯石を取ってもらえば歯周病の進行は止まるが、一度失われた歯槽骨は元には戻らないとされてきた。

 しかし、リグロスには、骨の再生や血管の新生、細胞増殖などを促すたんぱく質「FGF2」が含まれており、歯槽骨や周囲の組織の再生を後押しする効果がある。

 歯周病がひどくなると、歯茎を切り開いて歯石などの汚れを取り除く手術が必要になる。リグロスは粘り気のある液状の薬で、切開した歯茎を縫合する前に、歯槽骨の欠けた部分へ垂らして投与する。

 ◇大半の歯学部、治験参加 重大副作用なく 保険適用対象

 歯を再生できないか――そんな思いから、科研製薬(東京都文京区)と大阪大のグループが1990年代にリグロスの研究開発を始めた。薬の安全性と効果を実証して国の承認を得るために同社が2001年から段階的に実施した臨床試験(治験)には、阪大など全国の25施設が参加。日本には大学の歯学部が29あり、その大半がいずれかの段階で加わった形だ。

 臨床試験には約1000人の患者が参加した。治療後9カ月間でどの程度骨が再生したかを調べたところ、平均して壊れた部分の半分程度が修復されていた。

 歯槽骨が必要以上に成長するなどの重大な副作用は生じなかった。ただ、治り方の程度には個人差があったという。

 大阪大歯学部付属病院長の村上伸也教授(口腔(こうくう)治療学)は「歯の支えが増えることが期待できる点に意義がある」と説明する。

 外国で生まれた歯の再生治療法もあるが、保険適用されていない。リグロスは保険適用されているので自己負担が原則3割で済む。

 価格は決して安くはない。リグロスは歯槽骨がどの程度壊れているかによって大小2種類あり、大が約2万7800円、小は約2万700円。症状によっては2カ所以上に使う必要があり、手術代もかかる。

 村上教授は「長年の研究を通じて、手塩にかけてようやく世に放った薬。安全性と有効性を実感してもらいながら、普及へ向けて薬を育てていきたい」と話している。

 ◇「セルフケア」不可欠 歯間ブラシが有効

 歯周病対策には、日ごろから自分の歯を管理する「セルフケア」が欠かせない。

 日本歯周病学会が対策についてまとめた論文によると、歯周病は40~60歳の壮年期に発症・進行する場合が多い。痛みなどの自覚症状がないため、この時期の予防が重要となる。歯科衛生士などの専門家から年に1~2回はケアについて指導を受けることも推奨している。

 日常のケアは、歯磨きに加えて、歯の隙間(すきま)に合った太さの歯間ブラシを使うことが汚れを取り除くのに効果的だ。歯間ブラシが入らない狭い部分には、デンタルフロスを使う。

 学会の論文をまとめた森田学・岡山大教授(予防歯科学)は「歯間ブラシを使うと歯茎がマッサージされるので血行がよくなって老廃物が排出されやすくなり、歯茎が強くなる効果がある」と指摘する。ただ、使い方を間違えると歯茎を傷つけてしまうこともあるので、注意が必要だという。

 一方、歯周病の最大のリスクとされるのが喫煙だ。同学会によると、ニコチンの影響で血管が収縮するなどして、歯周組織が修復しにくくなるという。豪州で喫煙者と非喫煙者の歯周病の人の割合を比べる調査をしたところ、喫煙者の方が高く、進行もしやすかった。

 ただ、禁煙すると5~10年で歯周病になるリスクが非喫煙者と同じ程度になるという。

加熱式たばこの誤飲で傷害速報

日本小児科学会はこのほど、加熱式たばこの誤飲例が報告されているとして、2つの事例をInjury Alert(傷害速報)で公表した。加熱式たばこで使用するスティックは、紙巻きたばこより細かく刻んだタバコ葉を高密度に充填しており、子供が一口で口に入れられる長さ。同学会こどもの生活環境改善委員会では、今後、子供の誤飲が増える可能性があるとして、注意を呼び掛けている。

 加熱式たばこは、タバコ葉を充填したスティックに加熱板を挿入し、熱を加えてニコチンを含む蒸気を発生させ吸引する製品。2015年から本格的に販売が開始されている。加熱式たばこのスティックは一般的な紙巻きたばこの半分の長さで、乳幼児が一口で食べることが可能だという。スティックに含まれるニコチンなどの有害物質の含有量は公表されていないが、紙巻きたばこより高濃度の可能性もあるといい、子供が誤飲した場合、摂取量次第で重篤な状態になることもあり得るという。

 今回公表された事例は、9カ月の乳児。母親が子供の異変に気付いた時には加熱式たばこのスティック1本すべてを食べたとみられ、救急外来で輸液し、胃洗浄を行って中等量のタバコ葉を回収。入院にて経過観察し、翌日退院したという。別の事例では、11カ月の乳児が母の寝ている間に誤飲。正確な誤飲量は不明だが、救急外来受診後に一度嘔吐を認めたという。バイタルサインに異常を認めなかったため数時間経過観察を行い、帰宅させている。

 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会は、今後育児をする世代が加熱式たばこを使用するようになると、子供の誤飲が増える可能性があり、子供が誤飲しやすい短いスティックが流通することでさらに誤飲例が増えると考えられるため、子供の誤飲に配慮した改善を求めている。

関連リンク

「なんとかしたい!口内炎」あさイチ

なんとかしたい!口内炎
 今回のテーマは「口内炎」。NHKネットクラブアンケートによると、回答した女性の7割が年に何度も発生、ほぼ毎月という人もいた。口内炎とは口に起きた炎症で、原因もきっかけも様々。専門医は口内炎が命に関わる病気が隠されている事もあると警鐘を鳴らす。

「まじカンベン」頻発主婦のつら~い日々
 ほぼ毎月発症するという福田愛子さん。色は白で、よくできる部位は唇・ほほ・舌。口内炎ができると、体によいトマトやバナナなどを食べるのが辛い。福田さんは口内炎にずっと悩んでいるが病院には行っていない。

なんとかしたい!口内炎
 口内炎が年に数回出来るというゲストのマルシアは、できそうな時はなるべく早く栄養を摂取するようにしている。

予防の一歩!発生のメカニズムを知る
 口内炎のメカニズムを解説。口の中の粘膜に傷がつくと、そこに細菌が寄ってくる。そこで白血球や口を治す物質が細菌をやっつけようとするが、この細菌と物質の戦いのあとが口内炎である。この白い口内炎のことを、アフタ性口内炎と呼ぶ。口内炎は疲れ、ストレス、栄養不足などで、唾液が減り、抵抗力が低下するとなりやすい。

専門医徹底指導 最強予防テクニック
 口内炎の予防には、「唾液マッサージ」「うがい」「水分補給」「栄養と睡眠」がある。口の全体的な水分が減ると抵抗力が減ってしまうため。また疲れを感じたらビタミンDなどの栄養をとるとよい。また口内炎ができたら疲れのサインなので、睡眠も良い。

手探りの対策、これってアリ?ナシ?
 口内炎が頻発する福田愛子さんは、マウスウォッシュでのうがい、ビタミン剤、はちみつなどを試したが、効果を感じることができなかったという。

対策鑑定 使える対策はコレだ!
 福田さんの対策を新谷医師が鑑定。マウスウォッシュのうがいの中には刺激が強いものがあるので△。またはちみつは糖分が入っている場合があるので×。健康的な生活を送っている人はビタミン剤は△。また食事の栄養バランス、毎食後の歯磨きは◯。

再発再発また再発 犯人を探せ
 福田さんが口内炎を頻発する理由を新谷医師が検査。行うのはストレス、唾液量、粘膜以上の検査の3つ。福田さんの場合、ストレス、唾液量に問題はなかったが、粘膜が弱っている部分が3か所みつかった。新谷医師が注目したのは、福田さんが虫歯治療で金属が詰めた部分だった。金属で口内炎になる場合、物理的刺激とアレルギーが考えられる。福田さんは金属以外の部分にも口内炎ができていたが、自然発生的にできる場合もある。また寝ている時の歯ぎしりなども原因になる事があるが、マウスピースで楽になることもある。もし2週間以上口内炎が治らない場合、長年同じところに出来る場合は病院に行った方がよい。病院に行く場合は、歯科、内科、耳鼻咽喉科など。

正しく使って さくっと治す お薬の極意
 東京逓信病院薬剤師の大谷道輝さんが登場。口内炎の薬には、塗り薬、パッチ、スプレーの3種類がある。複数できた場合は、スプレー、塗り薬がオススメ。また1ヵ所に限定的に出来た場合はパッチがオススメ。また薬を塗るのが困難な部位、痛くて辛い部位にはスプレーがオススメ。薬を塗る場合はうがいで口の中をキレイにし、傷の周りの余計な水分をとってから、綿棒で周りから塗る。薬は唾液で流されるイメージだが、1時間ほどついていれば、効果は浸透する。また痛い時はステロイド入り、痛くなくなったらなしを選ぶとよい。

見逃しキケン!似ている危ない病気
 口内炎だと思ったら怖い病気が潜んでいたケースもある。60代の女性は口内炎の炎症部分が広がっている事に気づき、歯科医に相談したところ、大学病院を紹介され、口腔扁平苔癬だと診断される。粘膜が赤く腫れ、極稀にがんに変化することもある。この女性の場合、発症から回復までに3年もかかってしまった。口腔扁平苔癬は、赤い腫れ、ただれ、網状の模様、出血、痛みという症状がある。原因はアレルギー、遺伝などで、極稀にがん化することがある。その他、口内炎に似ているものとして、舌が白くなる白板症、赤くなる紅板症があり、両方共前癌病変であり、放っておくとがん化するもともある。

大学スポーツ顎顔面外傷、女性で多

2004-14年の全米大学体育協会(NCAA)外傷監視システムのデータを基に、NCAA主催大会に参加した選手の顎顔面外傷発生率を後ろ向き研究で検証(男性7種目、女性8種目)。顎顔面外傷発生件数は計2017件で、発生率は大会1万件あたり2.04件だった。発生率は女性で高かったが、手術を要する顔面骨折は男性に多かった。発生率の高い種目は男性のレスリングとバスケットボール、低い種目は女性のアイスホッケーとバレーボールだった。

多職種連携し口腔管理、室蘭・日鋼記念病院が「センター」設立

日鋼記念病院(室蘭市新富町、柳谷晶仁院長)は、患者の口の中の衛生状態を良好に保つ治療や指導を専門的に行う「口腔(こうくう)管理センター」を設立した。胆振では初の設立。「周術期口腔機能管理」「専門的口腔ケア」「終末期の生活の質(QOL)の維持」などを目的に、医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士ら多職種が連携し、専門的に支援する方針だ。

 食べる、話すなど、人間の根幹を担う「口(口腔)の機能」が低下すると、虫歯や歯周病などの口腔内トラブルだけでなく、糖尿病をはじめ、心臓病などの循環器疾患、誤嚥(ごえん)性肺炎などの呼吸器疾患などの病気にもつながる可能性が、近年の研究などで明らかになっている。

 同病院では、診療報酬改定による「周術期口腔機能管理料」新設に合わせて、2012年度(平成24年度)から、「周術期口腔機能管理」をスタート。手術前後に歯石除去やう歯(虫歯)の治療、歯磨き指導などを行うことで、手術創への感染や誤嚥性肺炎の予防にもつながり、「入院期間の短縮や抗生剤使用量の減少にもつながっている」(同病院)という。

 同病院でも、周術期に口腔管理を受けた患者は、受けていない患者と比べて(1)術後1週間以内の発熱無しで6・0%減(2)術後2日目以降の抗菌薬投与日数平均が1・02日減―と、一定の効果が表れている。

 医科と歯科の連携によるがん治療の質の向上を目指して、口腔管理を進めてきた同病院は、同センターの設立を通じて、口腔管理の重要性と効果を内外にPRし、「質の高い医療の実践」「専門性の確立」「環境整備」を図るなど、口腔管理をさらに推進する考えだ。

 センター長の加藤卓己口腔外科科長は、多職種連携による効率良い歯科受診システムの構築、栄養サポートチームや緩和ケアチームとの連携強化による終末期への対応―などを通じて、「西胆振地域の中で、口腔管理への意識を高め、センターが中心を担っていけるように取り組みたい」などと話している。

歯の病気で動脈硬化が悪化 京大、疫学研究で確認

失った歯の本数と、動脈硬化の悪化の程度とに強い関係があることが、京都大の大規模な疫学研究で明らかになった。

 歯周病菌の感染などで動脈硬化が進むことは従来の研究で指摘されていたが、地域の住民の集団で関係が確かめられたのは初めてといい、「歯の手入れと歯科の定期的な受診により口の中の病気を予防することで、動脈硬化に関係する死亡のリスクを下げる効果が期待できる」としている。

 京都大と滋賀県長浜市が連携して2007~10年、同市の30~75歳の男女約1万人を対象に進めた疫学研究「ながはま0次予防コホート事業」の成果。

 浅井啓太(あさい・けいた)京都大助教(口腔(こうくう)外科学)らは、まず参加者全員の歯科検診を実施。矯正や外傷によらない、歯周病などで失った歯の本数を確かめた。同時に、体を横たえた状態で、両腕と両足首の血圧と、心拍が末梢(まっしょう)血管に伝わる様子とを測る「CAVI」という方法で参加者の動脈硬化の程度を割り出した。

 年齢や性別、喫煙の有無、血糖値など、動脈硬化に関わるほかの条件の影響を排除して両者の関係の有無を解析したところ、失った歯の本数が多いほど、動脈硬化の程度が悪くなっていることが分かった。

 従来の動物実験や臨床研究では、口中で歯周病菌などの細菌感染による炎症が起こると炎症性物質が血管に入り込み、その結果、血管の内面が傷ついて動脈硬化を引き起こすことが分かっている。

 浅井助教は「毎日の歯磨きを中心とした生活習慣で動脈硬化が防げることを知って、健康管理につなげてもらいたい」と話している。

「歯を余分に抜かれた」治療に不満か 岐阜・歯科医刺殺

岐阜市黒野南2丁目の歯科医院で院長の渕野太賀臣(たかお)さん(50)が20日に刺殺された事件で、殺人未遂容疑で逮捕された無職長浜容疑者が数年前に渕野さんから受けた歯槽膿漏(しそうのうろう)の治療で「歯を余分に抜かれた」などと不満を抱いていたことが捜査関係者への取材でわかった。

 岐阜北署は22日、容疑を殺人に切り替えて長浜容疑者を送検した。

 捜査関係者や同署によると、数年前から渕野さんの医院に通っていた長浜容疑者は、渕野さん宛ての手紙を16日に医院に直接投函(とうかん)。17日には医院で渕野さんと話をしていたという。18日にも手紙が届いたため、渕野さんが同署に相談。手紙には治療への不満や金銭要求をほのめかす内容が書かれていたという。長浜容疑者も同日、渕野さんの後に署を訪れ、治療への不満などを漏らしていたという。

過去ログ