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「えっ…」笑う3歳、歯ぼろぼろ 白米さえ「硬い」に里親驚き

「えっ…」。児童相談所を通し、里子として預かった3歳10カ月の男児がニコッと口を開けて笑った瞬間、沖縄本島南部の女性は言葉を失った。

 まともな歯は1本もなく黒ずんだ根元だけが残っていた。痛がることはないが、プリンやヨーグルトなど軟らかい食べ物を好み、硬いものは食べられない。白米さえ硬いと嫌がった。

 男児は1歳の弟、0歳の妹と共に女性宅に預けられた。それまでは、男児の4歳上の長女が、育児放棄気味の両親に代わり3きょうだいの面倒を見ていた。

 主食は菓子パンやラーメン、コーラ。長女や男児が近所の弁当屋の「お手伝い」をして、売れ残りをもらうこともあったという。0歳の妹は、おむつかぶれで皮膚がただれていた。

 全ての歯が虫歯だった男児は1年半かけて治療した。まね事から歯磨きの仕方を覚え、永久歯に生え替わった小学校高学年の今は虫歯ゼロ。チャーハンなどの料理が得意になった。

 「人間らしくなったね」。歯が生えそろったのを見て、当時を知る女性の知人は思わずつぶやいたという。女性は「あのまま親元にいれば、取り返しがつかなかったかもしれない」と振り返る。「歯磨き習慣とバランスのいい食生活で虫歯は防げるが、子どもだけで負の連鎖を断ち切るのは難しい」と話し、「養育に悩む両親は、行政に頼るところは頼り、相談してほしい」と訴えた。
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■低所得世帯の子対象 虫歯治療は原則無料

 要保護や準要保護など低所得世帯の小中学生は、学校側が必要と判断する虫歯治療は原則無料。市町村によって「就学援助」「子ども医療費助成制度」など対応が異なり、沖縄県は「通学先の学校や教育委員会に相談してほしい」とする。

 2014年度に学校の検診で虫歯治療を指示された県内小中学校の児童・生徒のうち、実際に医療機関で受診した要保護・準要保護世帯の子はわずか3割程度にとどまっている。

出っ歯の早期矯正は不要…永久歯後でも効果同じ

子どもの出っ歯の矯正治療について、日本歯科矯正専門医学会は永久歯が生えそろわない段階での早期からの治療は行うべきでないとする診療指針を作成した。歯科矯正の診療指針が一般向けに公表されるのは国内で初めて。

 出っ歯は歯科矯正患者の4分の1を占める。同学会は外国の17本の論文から、永久歯と乳歯が交ざっている7~11歳児の出っ歯について、早期から治療を継続した患者群と、永久歯が生えそろった後から治療を始めた患者群で、歯並びの改善度合いを解析した。その結果、両方の治療効果に差はなかった。

 この結果は、科学的根拠に基づいた診療指針を掲載する、日本医療機能評価機構の医療情報サービス事業「マインズ」の ホームページ に掲載された。

 同学会の大野秀徳副会長は「経験上、早期治療だけで出っ歯は改善されず、ほとんどはその後、再度治療が必要になる。同じ治療結果であれば、患者の利益になる治療を選ぶべきだ」と話す。

 ただ現状では早期からの矯正治療が行われることも多い。この指針でも、早期の矯正で永久歯がはえそろってからの治療が不要になると判断された場合は、早期治療を認めている。

 矯正歯科分野で最大の団体、日本矯正歯科学会の槙宏太郎理事(昭和大学歯科病院長)は「歯の矯正は治療を受けた場合と受けなかった場合の比較研究が難しく、解析対象の論文が適切か、評価は難しい。早期治療で永久歯になってからの治療が不要になる人も多い」と話している。

舌小帯短縮症、手術で母乳摂取改善

舌小帯または上唇小帯短縮症への外科的治療を受けた生後0-12週の乳児とその母親237組を対象に、治療が母乳育児に及ぼした影響を前向きコホート研究で検討。術前と比較し、術後1週間と1カ月後の母乳育児への自己効力感を示すBSES-SF、乳頭痛重症度を示すVAS疼痛スコア、改訂乳児胃食道逆流質問票の各スコアは有意に改善した。平均母乳摂取量も3.0 mL/分から4.9mL/分と、155%の改善が見られた(P <0.001)。

耳下腺炎原因ウイルスの構造解明

日本医療研究開発機構(AMED)は9月27日、流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)の原因ウイルスであるムンプスウイルスがヒトに感染するために利用する受容体の構造を解明し、ウイルス糖タンパク質と結合した状態を原子レベルの分解能で可視化することに成功したと発表した。この研究は、九州大学医学研究院の柳雄介教授と橋口隆生准教授、生体防御医学研究所の神田大輔教授、薬学研究院の白石充典助教、筑波大学の竹内薫准教授、香川大学の中北慎一准教授、中部大学の鈴木康夫客員教授、北里大学北里生命科学研究所の中山哲夫特任教授、東京大学の清水謙多郎教授と寺田透特任准教授、高エネルギー加速器研究機構の清水伸隆准教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は近日中に、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of USA」に掲載予定。

旭川歯科学院 国家資格取得に向けて勝負の後期に突入

旭川歯科学院を卒業した歯科衛生士は、すべてのライフステージに応じた歯・お口の健康づくりをサポートする国家資格の専門職として活躍しています。近年注目されている業務として高齢者向け口腔ケア、訪問診療があります。高齢者の増加に伴いお口のケアが大変重要となってきました。
 メディアあさひかわ 2016.10

歯少ないと閉じこもり倍に 高齢者、会話ためらいも

残った歯が少なく、入れ歯も使わない高齢者は、歯が20本以上残る高齢者と比べて「閉じこもり」状態になるリスクが2倍近い―。東北大の相田潤(あいだ・じゅん)准教授(歯科公衆衛生学)らが、こんな調査結果を発表した。会話や食事をためらいがちになるほか、栄養状態の低下で体力が落ち、週に1回の外出も難しくなる可能性があるという。

 相田准教授は、歯の健康を良好に保つ重要性を指摘。「歯が少ない人は自分に合った入れ歯をして、快適にかんだり、しゃべったりできるようにすることが閉じこもりリスクの回避につながる」としている。

 相田准教授らは2006年、愛知県在住の65歳以上の高齢者に、歯の本数と外出の回数などを質問。この時点で閉じこもり状態ではなかった4390人を(1)自分の歯が20本以上残る人(2)19本以下で入れ歯を使っている人(3)19本以下で入れ歯を使っていない人―の3グループに分け、4年間追跡調査した。

 その結果、4年後に週に1回も外に出ない閉じこもり状態になった人の割合は(1)のグループが4・4%だったのに対し、(2)のグループは2倍の8・8%、(3)は2・2倍の9・7%だった。

 これらの数値に年齢や歯以外の健康状態などの条件を加えて調整した結果、65~74歳で入れ歯を使わない人が閉じこもりになるリスクは、20本以上残る人の1・8倍に上るとのデータが得られたという。

口唇口蓋裂に新たな治療 耳の軟骨細胞を培養鼻に移植 高さ・ゆがみ、整える

生まれつき唇や上あごにすき間などがある「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」。耳の軟骨細胞を使って鼻の形を整える新たな治療法の開発が進んでいる。また、人工歯根を埋めて義歯を取り付けるインプラント治療に、今年4月から公的医療保険が使えるようになった。

 口唇口蓋裂の赤ちゃんが生まれる割合は、国内では約500人に1人といわれる。上唇に割れ目がある口唇裂、上あごにすき間が残る口蓋裂、両方の症状を伴う口唇口蓋裂に分かれる。

 治療は、あごの発達に応じて出生直後から成長期、成長終了まで段階を踏んで、唇や上あごのすき間を閉じ、鼻の形を整え、歯茎の欠けた部分に自身の骨盤骨などを移植する。骨格が固まる16~18歳ごろをめどに一連の治療は終わる。

 口唇口蓋裂で鼻の変形があった関東地方の会社員の男性(25)は、大学4年の夏、自分の耳の軟骨細胞で鼻の軟骨を再生治療する臨床研究に参加した。骨盤などから取った骨や軟骨を移植する従来の方法と比べ、体の負担が小さいという。

 耳の後ろから1センチ四方の軟骨を切り取り、軟骨細胞を1カ月ほど培養して約1千倍に増やした。特殊なコラーゲンなどを素材にした「土台」(長さ5センチ、幅0・6センチ)に軟骨細胞を入れ、「再生軟骨」をつくった。それを鼻筋に移植し、鼻の高さやゆがみなどを修正した。「痛みが少なくて、うれしかった」

 東京大学と共同で開発したIT企業「富士ソフト」(横浜市)によると、治療対象は17歳以上を想定。再生医療製品として国の承認を得るための臨床試験(治験)中で、来年度の承認取得を目指しているという。

 ■インプラントに公的保険を適用

 また、歯のない部分の治療は16~18歳以降になる。

 関東地方の保育士の女性(23)は一昨年、治療の仕上げとして、1本分の歯の欠けた部分にインプラントを埋める手術を受けた。見た目のよさからインプラントを希望した。当時、埋設手術に医療保険は使えず、費用は約40万円かかった。

 口唇口蓋裂の患者に対するインプラント埋設手術が保険適用になったのは今年4月。手術法や人工歯の種類などによってかかる費用は異なる。日本口腔(こうくう)外科学会の朝波惣一郎(あさなみそういちろう)監事によると、1本実施した場合の患者の支払いは、3割負担で10万円弱が標準的という。「生活の質を高めるもので、ぜいたくではない」と話す。関連学会は、対象となる患者は年間約1200人と見込んでいる。

 ■他科との連携、必須

 口唇口蓋裂の治療は、形成外科や口腔外科が中心となる。ただ、中耳炎を起こしやすく、かみ合わせの矯正や言語訓練なども必要になるため、耳鼻科医や歯科医、言語聴覚士、臨床心理士との連携が欠かせない。また、口唇裂は妊娠時の超音波検査でわかる場合が多く、生まれる前からの対応も求められる。

乳幼児の舌小帯短縮症

1歳の息子。生後2カ月の時、耳鼻咽喉(いんこう)科で舌小帯(ぜつしょうたい)短縮症と診断されました。哺乳や食事に支障はないものの、成長してから発音に影響が出ないか不安です。医師からはひどい場合は手術も可能と聞きましたが、必要でしょうか。(富山県・M)

 ■答える人 宮新美智世(みやしんみちよ)さん 東京医科歯科大学准教授(小児歯科)=東京都文京区

 Q どんな病気ですか。

 A 舌の下側と口の底をつなぐ薄いひも状のものが舌小帯で、乳児期は大人に比べて厚くて短い状態です。成長に伴って舌の動きが巧みになり、舌小帯も薄くなって伸びますが、何らかの理由で短いままの状態が短縮症です。

 Q 生活への影響は。

 A かつては母乳がうまく吸えないなど哺乳障害との関係が疑われましたが、現在は否定的な見方が多いです。舌を前に出した時、舌先の真ん中がくぼんでハート形に見えるので、「ハート舌」と呼ばれることもありますが、元々先端がくぼんだ形の人もいるので、形だけでは診断しません。舌がどれぐらい動くかなど舌の機能で判断します。

 Q 発音について心配されていますが。

 A 子どもが正確な発音を身につけるのは5歳ごろです。発音に問題があり、舌小帯が原因と判断された場合は治療対象になりますが、頻度は高くありません。また5歳以降に治療を受けた上で、発音の訓練を始めても有効だという報告も複数あります。5歳まででも心配があれば言語聴覚士に相談してください。

 Q どんな治療ですか。

 A 手術で舌小帯を切って伸ばし、癒着を避けるために縫合します。周辺には傷つけたくない唾液(だえき)腺や血管が存在し、形成術や粘膜移植など全身麻酔が必要な症例もあり、低年齢ほど負担です。相談者のお子さんは1歳で、これから舌小帯が伸びる時期を迎える上、発音に問題がないことも多いので、成長を見守ってあげてください。

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