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がん 舌を残したい:1 「左半分切除」と言われ

東京都内に住む主婦(47)は2013年の年末、舌が腫れていることに気付いた。左縁がふくらみ、刺すような痛みも感じた。

 最初のうちは、金属の入れ歯が舌に当たって口内炎が出来たのかと思った。「ビタミンが足りないのだろう」と市販のビタミン剤を服用した。そして、口内炎用の薬を塗って治そうとした。

 しかし、腫れは引かない。翌年の2月下旬ごろにはさらに大きくなり、痛みも激しくなった。

 ただ、次女(16)が高校受験だったこともあり、診察を受けるのを先延ばしにしていた。次女が都立高校の推薦入試に合格したのを見届け、14年3月上旬、通い慣れた歯科医院を訪れた。

 「すぐに総合病院を受診して下さい」。舌を見た歯科医師にそう言われた。5日後、歯科医師が書いてくれた紹介状を持って、大学病院の口腔(こうくう)外科を受診した。

 舌を触診した大学病院の担当医にはこう言われたという。

 「細胞を取って検査しないとはっきりとは言えませんが、たぶん、舌がんです」

 CTやPETなどを使った精密検査の結果、3月下旬、正式に腫瘍(しゅよう)約5センチの舌がんと診断された。

 がんの進行度は4段階あるうちの「ステージ3」で、舌の左半分を切除することや、そのあと腕の筋肉の一部を使って舌を「再建」するといった治療法を担当医は淡々と説明した。主婦は「がん」という言葉よりも、「舌を切る」という説明にショックを受けた。

 実は主婦は、事前にパソコンの検索サイトに「舌がん」「手術」の単語を打ち込み、ヒットしたサイトを片っ端から読んでいた。

 「手術後に舌が3倍になったような気がして、息がしづらかった」「口を閉じられずによだれが出続け、一晩にティッシュペーパーを1箱使った」。そんなコメントが目に留まった。

 大学病院では「舌の一部切除」という以外に、別の治療方法の説明はほとんど受けなかったという。ただ、ネット上には、手術以外にも、抗がん剤治療や放射線の一種の陽子線治療など、様々な選択肢が紹介されていた。それを見て、「舌は切りたくない」と強く願うようになっていった。

日歯連会長「深くおわび」 組織内候補擁立は白紙に

政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)の高橋英登(たかはし・ひでと)会長は21日、東京都内で記者会見し、迂回(うかい)献金事件で歴代会長らが起訴されたことについて「国民と、歯科医療に携わる全ての方々に多大な迷惑と心配を掛け、深くおわび申し上げる」と謝罪した。

 日歯連は来年の参院選で組織内候補を擁立する方針だったが、いったん白紙にし、11月に予定する評議員会であらためて決める意向も明らかにした。

 起訴された前会長の高木幹正(たかぎ・みきまさ)被告(70)らは、政治資金規正法違反を否定。団体としての日歯連も起訴されており、高橋会長は、今後の公判での主張について質問されると「軽率な発言はできない」と言及を避けた。

 また、起訴された元副理事長の村田憙信(むらた・よしのぶ)被告(70)が日歯連の会計責任者を長年務めていたことに触れ「複数の役員や嘱託弁護士が関与する体制に改めた」と説明した。

 一方、高木被告が会長を辞任した日本歯科医師会は21日に開催した臨時理事会で、後任に元広島県歯科医師会会長の山科透(やましな・とおる)氏を選出した。

桜島唯一の歯科医廃業 診療報酬で不正

九州厚生局鹿児島事務所は22日、歯の治療本数を水増しし不正に診療報酬を請求したなどとして、鹿児島市・桜島にある医院の保険医登録を取り消した。医院は9月30日に廃業している。

 桜島で唯一の歯科医院で、同事務所の村岡国雄(むらおか・くにお)所長は「桜島の人には不便をかけることになり残念だが、適切な措置を取った」と話した。

 事務所によると、実際に使用した入れ歯の数より多く請求したり、保険点数の高い診療に振り替えたりするなど、2011年10月から12年9月にかけ、患者164人分の診療報酬計約110万円を不正請求した。

 12年に県と厚生局が実施した調査で発覚。福重氏は「不正の認識はなかった」と話し、得た報酬は返還する意向を示しているという。

嚥下機能検査は退院後にこそ必要

胃瘻造設術の点数は、2014年の診療報酬改定で1万70点から6070点に大きく引き下げられ、代わりに「胃瘻造設時嚥下機能評価加算」(2500点)が新設された。術前に嚥下造影(VF)または嚥下内視鏡(VE)を行い、嚥下機能を評価すれば、従来の胃瘻造設術の点数に近い報酬となる。そのため、胃瘻造設前には積極的に機能評価がされるようになった。その一方で、退院した後にこうした検査がしっかり行われているかは定かではない。在宅患者の嚥下機能の検査や訓練を行える医療機関を地図上にまとめる厚生労働科学研究の代表者、戸原玄氏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学講座高齢者歯科学分野准教授)に聞いた。

虚弱予防は口から 食べこぼし、むせに注意 歯科医師会が運動提唱 「医療新世紀」

ちょっとした滑舌の悪さや食べこぼし、飲み物にむせるといった口周りのトラブルは、高齢者の体が弱っていく最も早いサインだ。日本歯科医師会は、そうした不調をまとめて「オーラル・フレイル(口腔(こうくう)機能の低下)」と呼んで、早い段階での対処を、虚弱を予防するための国民運動にしようと提唱。効果的な普及啓発の在り方を検討している。

 ▽ささいなうちに

 口周りの健康と全身の状態との関係には科学的な裏付けがある。

 東京大高齢社会総合研究機構の飯島勝矢(いいじま・かつや)准教授(老年医学)らのグループは千葉県柏市の協力を得て、市内の65歳以上の高齢者1900人余りで口腔や全身の健康状態、食生活、生活の質など224項目を3年にわたって調査した。

 すると「歯の本数」や「食べこぼし、むせ」「かむ力」「食事の量」など多くの項目が、全身の筋肉量や筋力の低下、運動機能の低下などと強く関連していた。

 飯島さんらは項目ごとの関係を解析し、想定される虚弱の進み方を4段階の流れ図で表現。そのうち、筋力や運動機能の低下の前段階に当たる口周りの不調を、新しい概念として「オーラル・フレイル」と位置付けた。

 「軽微な口の弱りは、全身の虚弱の"上流"に当たる。この段階で対策を講じれば『ささいなトラブル』だからこそ元に戻したり、機能を維持したりできるはずだ」と強調する。

 ▽悪循環

 飯島さんはさらに、高齢者の社会的な活動性に着目する。家族や知人と食卓を囲む人は、独りで食べる人に比べて不調も少ないという。「皆と一緒なら多様な食品を食べるし、会話も弾み、唾液も出る」からだ。また、自分の健康への興味、関心も大事。口の状態を気にする人は歯科医にかかる機会も多く、機能がより長く維持できる。

 では、どうやって不調に気づき、対応をしたらいいのか。東京都健康長寿医療センター専門副部長で歯科医の平野浩彦(ひらの・ひろひこ)さんは兆候として「硬い物が食べにくい」「液体でむせる」「口が渇く」の三つを挙げ、「体の筋肉と同じ。食べる力も意識して使わないと衰える」と自助努力の必要性を指摘する。「かめない」「軟らかい食べ物を選ぶ」「さらに衰え、いっそうかめない」...という悪循環が典型的な始まり。食欲の低下を経て、栄養状態の悪化を生む。

 ▽パ、タ、カ

 自分がしっかり食べ物をかめているのか、簡単に分かる方法がある。奥歯でしっかりかむとあごも大きく動き、頬に手を当てると大きな筋肉の動きが伝わってくるはずだ。前歯だけをかみ合わせても筋肉はあまり動かない。平野さんによると、軟らかい物を食べる際は主に前歯しか使わず、このかみしめるための大きな筋肉が衰えてしまう。いつの間にか、好き嫌いより食べやすさで食べ物を選ぶようになることも、かむ力の衰えを示す要注意のサインだ。

 口の動きを測る簡単なテストもある。「パパパパ...」「タタタタ...」「カカカカ...」。パ、タ、カの3音を短時間でどれだけ細かく発音できるか。医学的にも確立した試験で、唇や舌の機能を示す。特に「カ」は舌の根元を使うため、のみ込む力と密接な関係があるという。

 口周りのちょっとしたトラブルへの対策は、まずはかかりつけの歯科で相談して指導を受けるのが一番。各地の歯科医師会が高齢者向けのセミナーや相談会を催したり、自治体が筋力強化や栄養指導と併せて教室を開いたりしている。

食べる喜び取り戻す 摂食嚥下のマップ開発

のみ込みの機能が低下した人や、胃に直接栄養補給をする「胃瘻(いろう)」の人などに、のみ込みの訓練をする「摂食嚥下(えんげ)」のリハビリテーションが行き渡っていない。専門職が少なく、多分野に散らばるため、探しあてるのが困難なことが理由の一つだったが、摂食嚥下に携わる医療機関などを地図上に示したマップが開発された。リハビリをして、食べる楽しみを取り戻すことが期待される

歯科医師の認知進まず 「死亡事例まれ」との声も 医療事故調査制度

今月始まった医療事故調査制度では、全国約6万9千カ所の歯科診療所にも、予期せぬ死亡事故に関する院内調査などが義務づけられている。だが歯科医師からは「治療が生死に関わる事例はまれ」との声もあり、制度の認知が進んでいないのが実情だ。専門家は、リスクを認識し、原因究明と再発防止を目的とする制度をきちんと運用するよう求めている。

 ▽小規模施設

 9月下旬。日本歯科医師会が、制度に関する研修会を東京都内で開いた。出席したのは、各都道府県歯科医師会で医療安全を担当する約80人。質疑の中で、ある参加者は「調査の対象事案かどうかを判断する明確な基準はないのか」と戸惑いの表情を浮かべた。

 今月1日にスタートした制度は、診療行為に関連して予期しない患者の死亡事案が起きた際、当事者である医療機関による院内調査や、第三者機関への報告を定めている。国内18万カ所の医療機関が対象で、歯科分野も例外ではない。

 ただ歯科医師会に所属している多くは、小規模な診療所を運営する民間の開業医。同会の瀬古口精良(せこぐち・あきよし)常務理事は「対象事例かどうかの判断も含め、規模の小さな施設が単独で対応するのは不可能だ」。制度上、支援団体が専門家の派遣などを請け負うことになっており、「死亡事案が起きれば、支援団体に指定された都道府県の歯科医師会にまず連絡し連携を取ってほしい」と呼び掛ける。

 ▽シンポ中止

 そもそも歯科医師の間で、制度への認知と理解がどの程度進んでいるのかは不明だ。東京都内で診療所を営む男性歯科医師(68)は「周囲の歯科医の間で事故調査制度が話題に上ることはなく、始まること自体を知らない開業医もいるのではないか」と明かす。

 実際、医療安全の関連学会は9月上旬に、今回の制度と歯科医療をテーマにしたシンポジウムを予定していたが、参加者が集まらず、結局中止になったという。

 この歯科医師は「日常の診療の中で、患者が死亡するような重大事故を身近に感じることはない」とも話す。

 ▽麻酔事故も

 しかし、鶴見大の佐藤慶太(さとう・けいた)教授の調査によると、歯科医療に関連して起きた死亡事案は2002年からの約10年間に少なくとも33例あったことが確認された。佐藤教授は「把握できていない事例もあるとみられ、あくまで最少の件数と考えるべきだろう。死亡がレアケースとは思わない方がいい」とくぎを刺す。

 日本大の小室歳信(こむろ・としのぶ)教授も、制度の対象となる事案は年に10件程度起こるとの見方を示す。「これまでも、麻酔薬でのアナフィラキシーショックによる死亡例や、抜歯した歯や治療に使う脱脂綿を口内に落とし、気道に詰まって窒息死した例があった」と説明。こうしたケースが起これば、制度の対象となる可能性があると指摘する。

 その上で、制度を適切に運用することで歯科医師の間でも死亡事例の情報を共有し、再発防止につなげる意義を強調。「人の命を預かっているとあらためて自覚しなくてはならない。カルテを整備し、万が一事故が起きた際は、使った器具や薬剤などの『証拠』を保存し、調査がスムーズに進むよう留意する必要がある」としている。

三重)入れ歯の日、入れ歯512個供養 四天王寺

「入れ歯の日」の8日、使い終わった入れ歯に感謝する供養祭が、津市栄町1丁目の四天王寺であった。512個の入れ歯が集まり、参加者約40人が見守る中、読経があげられた。

 供養祭は、入れ歯が捨てられないという声を受け、県保険医協会が16年前に始めた。参加者は本堂に供えられた入れ歯の前で焼香した。その後、入れ歯の一部は境内の供養塔に収められた。残りは金属部分を業者に回収してもらい、児童福祉施設などへの寄付金とする予定。

 津市幸町の自営業米田あき子さん(75)は、昨年末亡くなった夫の入れ歯を持参し、供養した。夫が半身不随になった後の19年間の思い出が詰まっているという。「残った入れ歯が気がかりだった。天国の夫もこれで安心したのでは」とほっとした様子だった。

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